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計画

卒業生のために作った胸飾り。 作り終えたブートニアを、委員の持つ箱の中に入れると呼び止められた。 「渡瀬君は……いいの?」 何のことだかわからずに首を傾げると、その人は小さな声でこう言った。 「……好きな先輩に渡したいって思う奴もいるみたいだから。渡瀬君はあの先輩に渡したいんじゃないかなって思ってさ」 「………… 」 少し考えたけど、これはクラス毎に作る数が決まってるし僕が他のクラスの周さんに渡したりしたら数が合わなくなっちゃうんじゃないかな? 「でも一組の僕が四組の周さんに渡しちゃったら、数合わなくなって困るでしょ?」 「あぁ……それもそうなんだけどね。うん。実際困るかも」 ……だよね。 好きな人に渡したいって気持ちもわからなくないけど、迷惑がかかることは出来ないよね。それでも僕のことを知っててこう言ってくれたのは嬉しかった。 「気にかけてくれてありがとう」 そんなやり取りがあった事を放課後下校準備をしている康介に話をすると「やっぱりな」と深く溜息を吐いた。 「昼休みさ、修斗さんいなかったろ?……あれ、告白されてたんだよ。あのブートニアを卒業式につけてくれって、四組の奴に」 そう言って不愉快そうに乱暴にノートを鞄に投げ入れる。 「え? 康介ってば告白現場に乱入したの?」 屋上からえらい剣幕で降りて行ったから、康介ならやりかねないと思ってそう聞いたんだけど…… 「は? バカじゃね? そんなことしねえよ……そんなことしなくても、修斗さんちゃんと断ってくれてたし」 そっか、心配なかったみたいだね。 「大切に思う奴がいるから、こういう意味のあるものはどんな物でも受け取れないって……」 その現場を思い出してるのか、今度は凄く嬉しそうに康介はそう言った。 「よかったね康介」 学校を出て、並んで歩く。 今日も周さんは補習授業だ。毎日ちゃんと真面目に頑張ってる。もうじき卒業しちゃうのに、あまり一緒にいられないのはちょっと寂しい。 でもしょうがないよね。 「修斗さんモテるからさ、卒業して働き始めて、周り女ばっかでさ……俺大丈夫かな? 心配だな……って思ってたけど、ああやってハッキリ言ってくれてるの見てちょっと安心した。修斗さん、やっぱカッコいいや」 康介は修斗さんがモテるから心配だってしょっ中言ってるけど、修斗さんだってよく同じこと言ってたよ?……康介は知らないだろうけど。 康介がバイトのある日に修斗さんとお茶して帰ることが何度かあった。ぼんやり無自覚な康介は実はモテてること、自分で気がついてないから心配だって。 全く二人して、おかしいの。 「あれ? 今日は康介はバイトなの? 僕これから靖史さんのところ行くけど……どうする?」 途中で道を曲がろうとする康介を、制服の裾を引っ張り引き止める。 「あ! 今日だっけ?……悪い、バイト入っちゃってる。終わったら竜んち行くわ。いい? 家庭教師今日はねえよな?」 「うん、じゃまた夜にね」 ……全く。 ちゃんと日にち言ったじゃん。忘れっぽいんだから。 でも、目的の物を受け取るだけだし僕一人でいいんだけどね。 こうして僕は康介と途中で別れ、靖史さんの家に向かった。

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