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夜のデート

夕飯を食べ終え部屋に戻る。 明日の修了式が終わればすぐに周さん達と卒業旅行だ。 「……楽しみだな」 クローゼットから旅行鞄を取り出し、そっと撫でる。 この少し大きめな鞄も、初めて周さん達と一緒に合宿と称した旅行に行った時に買った物だ。僕にとって友達と一緒に旅行なんてしたことがなかったから凄く嬉しかったっけ…… 初めて行った旅行のことを思い出し懐かしさに浸っていると、携帯が鳴った。 「あ……!」 周さんからだ! どうしたのかな? もう寝るのかな? 「もしもし……周さんどうしたんですか? 雅さん達は?」 『あぁ、お袋達ならもう帰った。竜太、今から出られる?』 もう会えないと思っていたから、康介達がカラオケの後二人で過ごしているのが羨ましく思っていたから、嬉しくて僕は電話口にぶんぶんと頷きながら「はい!」と答えた。 『じゃ、外で待ってて。すぐ行く』 そう言ってすぐに周さんは電話を切ってしまった。 僕は浮き浮きしながら服を着替え、母さんに周さんと少し出かけると伝え家を出た。 いくらなんでもこんなにすぐに来るわけないか…… 電話を切ってから五分と経っていない。それでも早く会いたくて、僕は家の前で周さんを待った。 しばらくすると何故か一台の車が僕の前で停車する。 「……?」 僕は家の前に立ってるだけだし、コンビニとかお店なんかもない単なる住宅街。何でこの車はこんな所に停まったんだろう? と不思議に思っていると、運転席から降りてきたのが周さんだったから声をあげて驚いてしまった。 「周さん? え?……車??」 驚く僕に、照れ臭そうに周さんは笑うと「ちょっとだけドライブしよう」 と言って助手席のドアを開けてくれた。 「こないだやっと免許取れたからさ……最初に助手席に乗せるのは竜太だって決めてたから」 「凄いです! なんか僕、びっくりしちゃって」 周さんはコツコツとお金を貯めて車を買ったらしい。 「……軽だし、ちょっと古いけど。それに自分で買ったって言ったって、結局謙誠も少し援助してくれたんだけどな。卒業祝いだとよ。謙誠が援助してなかったら、まだ買うのはちょっと先だったかも」 本当は謙誠さん、周さんに外車をお祝いでプレゼントするって言ってたんだって。自分で買うつもりでいたから流石にそれは……って断ったみたいだけど、少しの援助だって周さんは謙誠さんに借りを作ったみたいだと言って嫌がっていた。 素直じゃないなぁ。 周さんの事だから、援助してもらったと言ったってほんの僅かな額だと思う。 「凄いですね」 前を見て運転をする周さんが急に大人びて見え、惚れ惚れするやら寂しいやら、何だか不思議な気持ちになった。 周さんの運転する車でドライブ。 二人っきりのこの空間に段々とドキドキしてくる。 流れていく夜の街並みをぼんやりと眺めていると、不意に周さんの手が僕の太腿に触れドキッとした。

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