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卒業旅行/到着
お弁当も皆美味しいと喜んでくれて、作ってよかったとホッとする。でも卵焼きは殆ど周さんが食べてしまった。どんだけ好きなんだろうね。可笑しい。
昼食も済ませ、僕らは残りの時間を四人でお喋りをしながら過ごした。
ライブだったり旅行だったり、お出かけだったり……学校で一緒にいる時とはまた違った日常に、気持ちがわくわくしてとっても楽しかった。
窓の外を流れる知らない景色を見ながら、皆んなで他愛ないお喋り。
友達、仲間、大好きな人と当たり前にこうやって過ごす事に幸せを感じた。
新幹線を乗り継ぎ、やっと目的地へ到着する。
駅前には観光客向けの土産屋も多く、大いに人で賑わっていた。
「ホテルはここから少し歩けば着くみたいだよ? どうする? 荷物もあるしとりあえずチェックインだよね。あとちょっと、頑張って歩くか」
修斗さんがバッグの中から案内を取り出し、向かう方向に指をさす。
周さんが荷物を持ってくれようとしたのか、黙って僕の肩にかかる鞄の持ち手を引っ張った。
「……? いいですよ、自分で持てます」
女の子じゃあるまいし……
いくら荷物が大きいと言ったって、自分で持てないほどの量なんか詰め込まない。
「大丈夫か? 重たそうだけど……」
「平気です! 気遣いありがとうございます」
それにあんまり頼りなく見られるのも好きじゃない。
そんな事、口に出しては言えないけどね。周さんは別に僕のことを見下しているわけじゃないし、こうやって気遣ってくれるのは純粋に僕に対して優しいから。以前は可愛いとか言われても、男だしそんな事ない……というくらいにしか思わなかったけど、最近は可愛いという言葉に凄く抵抗がある。
そんなに弱々しく見えるのかな? 頼りないかな? って不安になるんだ。
途中土産屋を何軒か覗いた。そしてそこから二十分ほど歩いて僕らの宿泊するホテルに到着した。
凄く立派なホテルに少し驚く。パンフレットで確認はしていたけれど、実物はもっと素敵で豪華に見えた。
周さんが纏めてチェックインをする。
ロビーに飾られている調度品やこの近辺の観光ガイドを眺めながら周さんを待っていると、知らないおじさんに声をかけられた。
「今チェックインをしてるのが謙誠君の息子かい?」
謙誠さんに負けず劣らずな若々しくて陽気な雰囲気。きっとこの人が謙誠さんの知り合いのこのホテルのオーナーだ。
「はい。今日からお世話になります。よろしくお願いします」
僕はこの人がオーナーだと察しがついたので、失礼のないように頭をさげる。
オーナーは僕に「礼儀正しくていい子だ!」と言いながら頭をグシャグシャに撫で回して、周さんの方へ歩いて行ってしまった。
ぽかーんとした康介が呟いた。
「今の人凄いね。高坂先生と修斗さんを足して倍にしたような………」
……足して倍って、どんだけだよ?
「あ? 何それ、俺がチャラいってこと?」
ムッとした修斗さんが康介に絡む。でもよく見ると顔は笑っているから本気で怒ってるわけじゃないのがわかる。また康介を揶揄ってるんだ。
そうこうしてるうちに周さんが先ほどのオーナを連れてこちらに戻ってきて紹介をしてくれた。
「あ、この人が謙誠さんの知り合いの人。このホテルのオーナーだって」
あまりにも酷くぶっきらぼうに言うからヒヤヒヤする。
「あはは、よろしくな。謙誠君の頼みだから最高の部屋を用意させてもらったけど……君らまだ高校生だろ? 贅沢だなぁ。まぁ、ゆっくり楽しんで行ってな。あ、夕食は部屋に出すこともできるけどどうする?」
こんなに高そうなホテルの最高の部屋って、いったい……
何だか場違いな気がしてどぎまぎしてしまう。
「じゃあ、部屋にお願いします。何時からですか? 食事の時間まで観光してきて大丈夫ですよね?」
修斗さんがそう聞くと、勿論大丈夫だし、ここの温泉もいいお湯だから入ってくるといいよと、親切に周辺の温泉施設なども教えてくれた。
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