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卒業旅行/観光初日
「じゃあ先ずは部屋に案内するね」
オーナー自ら僕らを案内してくれた。
ロビーを抜け、通路を進む。途中で気がついたけど、僕らが案内されたのは離れの個室だった。
「うわぁ……贅沢!」
一番最初に部屋に入った修斗さんが呟く。
「マジか……凄え……」
康介も入口で立ち止まり部屋を見渡して驚いている。
それもそのはず、案内された部屋は最高の部屋と言うだけあって広さは勿論の事、とっても豪華な部屋だった。
入ってすぐ目の前には大開口の窓、手入れのされた庭園。明るくて広々とした客間。横にはベッドが二つ。そして更に壁を挟んだ向こう側にまたベッドルームがあるらしい。
そっか……
気にしてなかったけど、四人で一部屋なんだよね。
「おー! こっち見て! 凄え! 露天風呂付いてる」
あちこち歩き回って奥に行った康介に呼ばれ僕も壁の向こうへ行くと、そこには立派なお庭に露天風呂が鎮座していた。
「俺こっちの露天風呂の見えるベッドルームがいい!」
康介がベッドに飛び乗り主張する。
「そういうのは後で決めよ」
はしゃぐ康介を嗜めるように、修斗さんがぴしゃりと言った。
「ここの風呂も本館の大浴場の露天風呂も、みんな楽しんで行ってな。それじゃあごゆっくり」
オーナーが出て行くと、周さんはポーンとベッドに横になった。
「本当贅沢だな。謙誠に払った金額より実際には絶対高いだろ……なんかムカつく」
寝そべる周さんの横に僕も座った。僕の腰に手を回し服の中に侵入してくるその手をさりげなく阻止しながら、これから出かける場所を皆んなで話し合った。時間もたっぷりあるし、少し遠出をしても大丈夫そうだと言って、すぐにホテルを出発した。
ホテルを出て、駅から歩いて来た道へ少し戻るとバス停がある。バスを乗り継ぎ、最初に来たのは鍾乳洞。ガイドブックにも大きく載っている有名な観光スポット。
「僕、初めて……中が洞窟になってるの? あ! ねぇ康介、ここ暗い? 怖くない?」
入場料を払いに行った周さんと修斗さんの後ろ姿を眺めながら、康介に小声で聞いた。
「あは、大丈夫だよ。そういや竜は暗いの苦手だっけ? お化け屋敷とかダメだもんな」
ちょっと笑われたけど、中はちゃんと灯りもあるし、整備されてるから心配ない、と教えてくれた。確かに入口をよく見ると子供から年配者まで色んなお客さんが入って行ってる。
「怖くないなら大丈夫……」
安心したところで、周さんと修斗さんが戻ってきた。
「ハイキングコースと探検コースってのがあったから、探検コースにしたぞ。ハイキングコースよりちょっと距離があるらしい」
周さんがそう言って、チケットを手渡してくれる。探検コースの入口はどうやらこことは違うらしく、皆で更に先を進んだ。
「ねえ……なんで?」
探検コース入口で受付を終えた僕は康介を睨んだ。
「知らねえよ……探検コースだからじゃね? 大丈夫だよ、みんないるし。な?」
受付を終えた僕らは何故か受付で探検セットとかいう道具一式をレンタルし、更衣室にいる。
長靴にレインコート、ヘッドライトのついたヘルメット、短パンまで用意してある。
「なんか結構濡れるらしいから、着替えの用意が無い奴は短パンにノーパンがオススメだって入口にいたオッさんが言ってたよ」
修斗さんが楽しそうに教えてくれた。
濡れるなんて聞いてない……
ヘルメットにライトが付いてるってことは暗い場所があるんだよね?
歩く道は整備されてるんじゃないの?
異様に長いこんな長靴、僕初めて見たよ……
荷物は全てロッカーに入れていかなきゃいけないし……
もう不安しか湧かない!
「うぉ……ノーパン! 尻がスースーする! ちんちんフラフラして落ち着かねー!」
早速短パンに履き替えた康介が楽しそうにお尻を振ってる。
「………… 」
なんで探検コースなの?
ハイキングコースでよかったのに。
ひとり納得がいかずモタモタしてたら、いつの間にか皆んなが準備を終えていたので慌てて着替える。ヘルメットをかぶり、レインコートにも腕を通した。
「ひゃっ!」
不意に周さんにお尻を撫でられ、驚いて変な声が出ちゃった。
「あれ? 竜太ノーパンじゃねえの? 濡れるってよ? とりあえずタオルは借りたけど……」
急いで着替えたからそんなところまで気が回らなかった。てか、三人とも今パンツ履いてないのかな?
「ああ……もういいです。濡れないように気をつけますから」
僕は今更面倒だったのでそう言うと、修斗さんが元気よく掛け声をかけた。
「じゃ、出発ー! 頑張ろー!」
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