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卒業旅行/散策
最後のポイントにも何とか辿り着き、そこで僕らは四人で記念写真を撮った。広い場所で明るければ何も問題はない。でもまた今来た道を戻らなければならないことを考えると、憂鬱で挫けそうになった。
足元から身体が冷える。周りの暗さに心が折れそうになる。泣きたいのをグッと堪え、周さんに励まされ、やっと全員無事に出口へ帰還した。
更衣室へ戻り、身支度を整える。
「ひゃー! ビッショリ! ちんちん寒くて縮こまってるよ!」
康介がお尻丸出しで着替えをしてる。
「………… 」
レインコートを羽織っていた上半身は無事だけど、みんなレンタルした短パンはビッショリ濡れてる。そして例外なく僕もずぶ濡れ。むしろ他の三人より濡れてるんじゃないかな。
面倒臭がらないで僕もノーパンで行けばよかった……
……これはしょうがない。
着替えを終えた僕らはまたバスに乗りホテルの方へと戻った。
少し時間があるので土産屋を覗いていくことになった。ちょっとした試食も楽しんでいると、周さんが別行動をしようと提案してきた。
「じゃあ、三十分後にこの店の前な」
康介と修斗さんと別れ、僕は周さんと一緒に隣の店へ入った。
「ここね、最初に通った時から気になってたんです。見て周さん! 和菓子屋さんなのにバウムクーヘンがありますよ。あ、中で食べられるみたい。美味しそう!」
僕は周さんと二人になれた事が嬉しくて、ちょっとはしゃいでしまった。振り返り周さんの顔を見ると、恥ずかしそうに僕を見ている。
「……あ! すみません」
無意識に周さんと手を繋いで店に入っていた事に気がついた僕は、慌てて周さんの手を離した。
でも、今更このくらいのことであんなに恥ずかしそうに顔を赤くしてるなんて、何か周さん変なの……
何となく大人しく感じる周さんが気になりつつ、それでもバウムクーヘンの誘惑に負けた僕は店の中で食べるために一つだけ注文をした。
サービスで緑茶も頂き、周さんと店の奥のテーブルにつく。
周さんが僕が食べているところをジッと見つめてくるからちょっとドキドキしてしまった。
やっぱり周さん、何か変……
周さんの視線に戸惑いながらバウムクーヘンを食べ終え、僕らはまた店の外へ出た。
「竜太、今度はこっち」
周さんがボソッと呟き僕の腕を取る。何処か行きたいお店があったのかな? ちょっと早歩きな周さんに引っ張られるようについて行くと、人気のない路地裏へと進んでいく。
「周さん? お店こっちの方には無いですよ?」
「………… 」
無言の周さんに手を引かれ、どんどん奥へ進んでいき、終いには建物の間の僅かな隙間へ追いやられてしまった。
「周さん? なに? どうしたんで…… 」
壁へ押され、口を手で塞がれる。
周さんが僕の耳元へ顔を寄せると、ボソッと僕に囁いた。
「竜太……今ノーパンでしょ?」
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