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卒業旅行/びっくり康介 露天風呂

楽しみにしていた卒業旅行── 修斗さんが卒業してしまい、春休みのこの旅行が終わったらすぐに一ヶ月の研修だと聞かされて、俺は楽しみなのと寂しい気持ちでちょっと複雑だった。 研修は勤める会社の研修施設で泊まりだと言っていたから、きっと丸々一ヶ月は会えなくなるんだ…… だから、この旅行ではいっぱい修斗さんといちゃいちゃするんだ。喧嘩とかつまらないことしないで、今日は素直に修斗さんと過ごすんだ! そう思って俺はこの旅行に来た。 それなのに…… 周さんの神隠し騒動。 行方が分からず凄い心配した。 結局周さんは無事で適当な時間に戻るらしいけど、竜はすっかり元気が無くなってしまって、修斗さんも俺も竜の方が心配だった。 全く周さんたら何やってんだよ。 部屋に戻って豪華な夕飯。 本当ならここには周さんもいて、四人で楽しく食事をするはずだったのに。竜が俺らに気を遣わせまいと、頑張って笑顔を見せてくるのがわかる。無理しなくていいのにな。健気だなって余計に心配になってしまった。 食事を終えてから、竜が買ってきてくれたスイーツをもらう。実は修斗さんも別の洋菓子店で甘いものを買っていて、竜と分け合って食べるんだと楽しみにしていた。それもテーブルに広げ、三人で楽しくお喋りをしながら食後のデザートを楽しんだ。 それから食事前に入りそびれた温泉に行こうと決めたんだけど、竜が眠いからと言ってベッドに入ってしまった。 眠いって……まだ早くね? 何となく様子が変だな、とは思ったんだけど、修斗さんに温泉に行こうと急かされたからあまり気に留めずに支度をした。 「なぁ、大浴場行く前にやっぱり先ずはこの部屋の露天風呂堪能してからにしない?」 修斗さんに言われて、それもそうだよなと俺も頷く。 竜が寝ている寝室の隣、もう一つのベッドルームから露天風呂に続く扉がある。そこを開けるとちょっとした脱衣スペースがあり、そこで俺らは服を脱いだ。 脱いだと言うよりも、俺はご機嫌な修斗さんに雑に服を脱がされた。俺がパンツ一丁になるとすかさず尻に手を入れてきて、ケラケラと笑いながら撫で回してくるから、そんな修斗さんが可愛くてしょうがなかった。 「康介のお尻ふにふにー!」 「こら! やめてください!」 修斗さんに触られるだけで勃っちゃいそうになるのを平常心で押さえ込む。竜は寝てるとはいえすぐそこにいるんだから、エッチなこと出来ないって……わかってんのかなこの人は。まぁ戯れてくれるのは嬉しいけどさ。 二人でふざけながら小走りで露天風呂まで向かい、互いに湯を掛け合ってお湯に浸かった。 「なんか星空凄えな……見てみ康介。静かで気持ちいい」 フワッと上を向いた修斗さんが俺の肩に頭を乗せる。 確かに星空も綺麗だけど、月明かりに照らされ少しだけ頬をピンクに染めた修斗さんの方が綺麗で見惚れた。 キスぐらい……いいよね? そう思って修斗さんの腰に手を回し、俺の方へ体を向かせると、修斗さんも俺の腰に手を回して首筋に顔を埋めてきた。 「……なあに? 康介」 「別に……何でもない」 いつも求めるのは俺からなんだ。だからたまには修斗さんから強請ってほしい。そう思って俺はちょっとはぐらかした。 キュッと抱きついてきた修斗さんが、思わせぶりな顔をして俺の上に跨る。肩に回した修斗さんの腕に力が入り、引き寄せられた。 「どうしたい? 康介 」 「……どうしてほしい? 修斗さん」 俺が言うと、ふふ……と笑って俺を見つめる。 あぁ、カッコいいな。 その笑顔で見つめられるだけで幸せな気持ちでいっぱいになる。 「康介……キス、してよ 」 修斗さんが言い終わる間も無く、吸い込まれるようにして俺は唇を重ねていた。 ゆっくりと舌を絡める。 これから暫く会えなくなるのか……なんて寂しい気持ちが頭をよぎったのを慌てて追い出し、今目の前にいる修斗さんに集中した。 うっとりと目を瞑り、俺のペースに合わせて舌を絡めてくれる修斗さん。もっと全身にキスをしたい、もっと色んなところに触れていやらしい声を出させたい。段々とエッチな気分になってきたところで、ふと人の気配を感じてドキッとした。 チュッ……と軽く音を立て、名残惜しそうに唇を離すと、目の前の修斗さんが俺を見つめる。 俺を見つめる修斗さんの視線と、なぜかもう一つの視線…… ……?? 「ぎゃ!」 びっくりしすぎて変な声出た。 俺らの背後に、何食わぬ顔をした竜がこちらを見つめ温泉に浸かっていた。

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