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卒業旅行/仲直り

「竜太君、おはよう」 ひょこっと壁から修斗さんが顔を出す。 「あ! お、おはよう……ござい……ます」 下着姿の修斗さんを直視できない。 僕がどうしたらいいのか戸惑っていると、ベッドでまだ眠っている周さんの姿を見ながら修斗さんがクスッと笑った。 「全く……どういう神経してんだろうね。竜太君も少し酔ってたから……まぁ、しょうがないよ。昨日のアレは、ほら……お互い様ってことでさ。気にするのやめよ? ……だめ?」 ちょっと苦笑いな修斗さんが小首を傾げて僕を見る。 ……恥ずかしくて泣きそう。 「あの……ごめんなさい。本当にごめんなさい。あんなことするつもりじゃなかったんです! あと……康介と仲良くしてるの羨ましくて。お風呂とか……その……邪魔ばっかしちゃってごめんなさい! それにその後……も」 「あぁ、いいって。そんなの俺も楽しかったし、竜太君可愛かったし。いい思い出になったよね、三人で露天風呂。ふふ……周はいなかったけどな」 二人で話してると周さんが起きてきた。 不機嫌丸出しな顔して修斗さんを睨んでる。 「なんだよ、今三人で風呂っつった? 何で竜太も一緒に風呂入ってんの? は?」 は? じゃないよ! 「周さんは黙ってて! なに起き抜けに怒ってるんですか! 怒ってるのはこっちです! 僕が誰とお風呂に入ろうが勝手でしょ!」 僕がキッと睨んだら周さん黙っちゃった。 「とりあえず、修斗さんも服着てください。もう少ししたら朝食食べに行きましょう」 夜と違い朝食は本館のバイキングだと言っていた。遊覧船に乗るには少し早めに朝食を済ませないとってみんなでちゃんと決めていたんだ。 何となく周さんとも顔を合わせにくく、僕は黙って自分の手荷物の支度をする。どうしても顔を見ると昨晩の痴態が思い出されて恥ずかしくて苦しくなる。周さんばっかりが悪いわけじゃないのに、どうしたらいいのかわからなくて、僕は周さんに当たってしまった。 「………… 」 「竜太?……どうした? 何で怒ってるんだ?」 「………… 」 なんで? って! 何とも思わないのかな? 気にしないのかな? 「何でって! 周さんは何とも思わないんですか? あんな風に……あんな……は、恥ずかしいじゃないですか! 隣に……隣も……もっ、もうっ! 信じられないっ!」 口に出すのも恥ずかしく、僕は周さんの胸を拳で思いっきり叩いた。 「いや、だってエッチ誘ってきたの竜太だぞ? 俺はダメだって言ったぞ?でも竜太の方から俺の事誘って煽ってきたから、まぁいっか……って」 「嘘だっ!」 百歩譲って僕が誘ってしまったのかもしれないけど、周さんが「ダメだ」なんて絶対言うわけない! 調子のいい事言っちゃって、ムカつく! 「そんなわけないもん! 周さんには羞恥心ってものは無いんですか!」 「いや、大丈夫だって、あいつらだって夢中でズコバコやってんだからこっちのことなんか見ちゃいねえよ」 「……! ズコバコって!」 ちょうどその時、起きてきた康介も顔を出した。 「ほら、康介! なあ、お前ら俺らのことなんか見てねえよな? ……な?」 「……見てない……です」 は? 康介、顔真っ赤っかじゃん! 見てるじゃん! 「周さんのばか! 康介も見てるじゃん! 信じらんない!……もうっ! 康介のエッチ! 僕だって見てるもんね! お互い様だからね! バカっ!」 「………… 」 なんか興奮して変な事を口走ってしまった事にもしばらく気がつかず、康介と周さんにあたりまくってしまった。 「竜太君落ち着いて。ほら、見られてたのはお互い様だし、ね? 竜太君色っぽくて素敵だったよ。綺麗だし全然恥ずかしくないよ! 俺ら誰にも言わないし、周の事も許してやってよ」 いつの間に側にいた修斗さんに宥められ、何だか頓珍漢なことを言われながらも何となく落ち着いてきたので、僕は周さんと康介にも謝った。 「早く朝飯行こうぜ。俺腹減っちゃった……ほら、康介もぼんやりしてないで早く着替えろよ」 さっきから大人しくなってしまっている康介の背中を修斗さんが押しながら部屋から出て行く。 僕はゆっくり周さんの方を振り返り、もう一度ちゃんと謝った。 「僕……言い過ぎました。ごめんなさい。僕も悪かったです。恥ずかしすぎて動転しちゃった……」 まだ恥ずかしさは消えないけど、周さんの胸に顔を埋めると、周さんはキュッと抱きしめてくれる。 「ごめんな。心配かけたし、恥ずかしい思いさせちまって。でも俺、竜太に迫られたら我慢なんて無理だから……それと康介の野郎、竜太のエロい姿見てたから後でぶっ飛ばす!」 周さんは行為の最中、何度も康介と目が合ったことを思い出したらしく怒りが再燃してイライラし始めたので「だから! いいんです!……お互い様なんです!」と、そう言って僕はまた周さんの胸を思いっきり叩いた。

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