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1会.12月4日

12月も初まったばかりのある水曜日。 残業で遅くなった私は、ただ近道をしようと、軽い気持ちで公園に入った。 雪が降らないこの地域でも、冬はやっぱり冷える。 明日も早いし、さっさと帰って寝てしまいたかった。 林の中へ続く道は、街灯も少なく薄暗い。 赤土で舗装された道を歩く度、私の革靴がコツコツと小さな音を立てる。 23時と遅い時間な事もあり、公園内を歩いているのは、私だけだった。 風の音さえしない。 そして、公園の真ん中辺りにきた時―― 私はいつもと違う様子に、ふっと足を止めた。 道の端に設置されたベンチの右端に、黒いダウンジャケットを着た若い男が座っている。 背もたれに片腕を引っ掛けて寄りかかる様子は、どこかぐったりとして見えた。 酔っぱらっているのか……? 「……君、大丈夫かい?」 近寄ってみると、微かな寝息が聞こえてくる。 少し長めの黒髪を軽く跳ねさせた、今時の若者だ。 スッキリした鼻筋と薄い唇、整った顔立ちは、まるで芸能人のように格好良い。 「んぅ……」 不意に男が呻き、思わず見惚れてしまっていた私は、慌てて彼の肩を叩いた。 「君! こんな所で寝ていたら、風邪をひくぞ? 起きなさい」 酔っているなら、極力揺すらない方が良いだろう。 何度か声をかけていたら、男がぼんやりと目を開けた。 「ぅん……先生……?」 しかし、まだ意識は夢の中にいるのか、視線が定まっていない。 我ながらお人好しだとは思うが、声をかけた手前、このまま見捨てる訳にもいかないだろう。 「君の家は、この近くかい? 一人で帰れるか?」 男は何も答えない。 しかし聞こえてはいるようで、よろよろと手を伸ばし、私の二の腕を掴んだ。 もしかしたら、見た目より体調が悪いのかも知れない。 「大丈夫か? 動けないようなら、救急車を――えっ?」 気付いたら私は、彼の腕の中に抱き締められていた。 「会いたかった。先生……」 彼が切ない声を漏らす。 「いや、私は――ッ!?」 人違いだ! しかし、否定するために開いた口を、彼の唇に塞がれた。 隙間から潜り込んできた舌が、私の舌を絡め取ろうと、口腔を動き回る。 「んッ! ふんぅ……っ!」 男同士のキスに焦った私は、押したり叩いたりと抵抗を試みるが、彼の腕はビクともしなかった。 その間も彼の舌は私の口内をくすぐり、唾液を掻き混ぜ…… 快感に負けた私は、抵抗をやめて彼に身を委ねた。 「っふ……んふぅ……」 頭がクラクラする。 彼の舌に擦られるだけで、腰の辺りがピリピリと甘く痺れ、全身から力が抜けていった。 婚期は逃してしまったが、42年生きてきた中で、それなりに女性との付き合いはある。 その中で何度経験したよりも、彼のキスは別格だった。 男同士だというのに、そんな事がどうでも良くなるほど、彼のキスに溺れていく。 自分からも舌を絡めにいくと、その快感はいや増した。 顎に伝い落ちる唾液の感触さえ気持ち良い。 年甲斐も無くキスに夢中になっていると、彼に抱き締められたまま、私はベンチに押し倒された。 その後の展開に気付かない訳ではなかったが、彼の舌に絡め取られると、頭の中が真っ白になって何も考えられなくなる。 何年もご無沙汰だったせいか、むしろ快楽を期待してしまう、貪欲な私もいた。 そのため、彼の唇が離れると、寂しさに苛まれる。 「キス……好きなんだな、先生……?」 「いや、違――っ、ふぅ……」 口では「違う」と言いながら、彼にキスをされると、そのまま流され溺れてしまう。 彼の手が、私のネクタイを引き抜き、スーツとYシャツのボタンを外していく。 官能に火照(ほて)った肌が、冬の空気にブルリと震えた。 酒を飲んでいるせいか、焼けるように熱い彼の手が、少し冷えた素肌を撫で回す。 脇腹から滑った彼の右手が、さして締まりのない腹で円を描き、上へと這い上がって―― 「ひぅッ……!」 薄い胸板の頂きを摘ままれ、悲鳴のような嬌声が漏れた。 「先生の乳首……ぷっくりしてて可愛い」 「やぁ……やめ……あ、ふあっ……」 女性のような膨らみなど無いのに、うっとりと呟いた彼は、申し訳程度の突起をクリクリと捏(こ)ね回す。 普段は触られた所でなにも感じないのに、快楽の熱に浮かされた頭が、勝手に気持ち良いと感じてしまう。 彼が喉の奥で低く笑った。 「先生、ヤらしい……まだ右しか触ってないのに、もう左の乳首まで硬くなってる……喰っても良い?」 「だ、ダメに決まって――うぁっ……!」 「おっと……」 左の乳首にカリッと歯を立てられた瞬間、背中に電流が走ったかと思った。 身体がビクンと跳ね上がり、彼が押さえていなかったら、この狭いベンチから落ちていたかも知れない。 私の足の間に割り込んだ彼が、右の乳首を指先で弾きながら、左は押し潰すように舐(ねぶ)り始めた。 「あふ……っん……」 左右で違う刺激を与えられ、頭の中がグルグルする。 拒絶の言葉は嬌声に代わり、下着に隠された欲望は、窮屈(きゅうくつ)そうに頭をもたげていた。 「あああっ!!」 彼の膝が、不意に私の股間をグリッと押し、凄まじい快感が脳天を貫く。 乳首をチュッと吸い上げた彼は、欲情にギラギラする目で、私を見下ろした。 「先生、硬くなってるよ? 苦しくない? ……俺が、脱がしてやろうか?」 もう何も考えられなくなっていた私は、ただただ頷く。 もう恥も外聞も考えられない。 私に覆い被さった彼は、また甘くしっとりと口付けながら、片手でベルトを弄る。 少し手間取っているようだが、間もなくカチャカチャ音を立てていたベルトが外され、チャックを下ろされた。 彼に下着ごとスラックスを引き下ろされると、硬く張り詰めていた私の息子が、勢い良く飛び出してきた。 42歳にもなって、こんなに感じたのは初めてだ。 冷たい空気に触れた自身が、待ちきれずにプルプルと震える。 「先生の、もう濡れてる……」 「ふあっ……やぁ、あ……ンッふ……」 彼の手が私のモノを扱く度、透明な汁がダラダラと溢れ出す。 グ、チュ……ズチュ…… 水音が激しい。 ずぶ濡れの自身を擦られ、頭が真っ白になっていく。 片足だけスラックスを脱がされ、左足は中途半端に脱がされたスラックスごと、ベンチの背もたれに引っ掛けられた。 「良い眺め……」 恍惚(こうこつ)とした彼の呟きが耳に入り、私の顔は今までになく熱くなる。 ひ、人気が無くて良かった…… 「先生……」 「ン……」 甘えるように囁いた彼が、しっとりと口付けてくる。 チュク……チュプ…… ズチュ……クチッ…… 二倍に増えた水音が、私の頭を快楽で掻き混ぜる。 あ……もうイく…… 「ンゥ……ッ! ふ……」 久しぶりに味わった解放感と、得も言われぬ浮遊(ふゆう)感。 私まで、酒に酔ってしまったようだ。 「はぁ……ふぅ……ン……」 キスの合間に何度も息を吸う。 苦しいはずなのに、胸の高揚が治まらない。 白濁を搾り上げるような指の動きに、腰がビクビクと震える。 不意に唇を離した彼が、色っぽい笑みを浮かべた。 「いっぱい出たね、先生……ほら、指がこんなにベトベト……」 私に見えるよう手を上げた彼が、今出したばかりの白濁を指先で弄(もてあそ)ぶ。 その妖艶(ようえん)な姿に、背中がゾクリと痺れた。 同時に、とんでもない恥ずかしさが襲ってくる。 「やっ、やめ――ッ! ……ン……ふぅ……」 快楽と羞恥の間で戸惑っていた私は、また彼にキスをされ、頭を溶かされていく。 不思議だ…… 彼のキスだけで、恥ずかしさが薄れ、どこかに消えてしまう。 彼の手が腹部を滑り、私の白濁で汚れていくのさえ、興奮の材料にしかならない。 快楽に呑まれた私は、自分がどんな格好をしているのか、忘れてしまっていた。 私の腹部で、クチャクチャ水音を立てていた指が下へと滑り、股間を通り過ぎる。 そして彼の指先は肛門まで辿り着き、あろう事か、孔の縁をクルクルとなぞりだした。 「ふンぅッ!? ふぅ、ンッう、ぅう――!!」 これからされる事に気付いた私は、慌てて抵抗するが、抗議の声さえ彼のキスに呑まれていく。 はっきり言って怖い。 男同士なんて初めてなのだ。 しかも、今触られている場所は、本来『排泄』に使われる。 まさかそんな所に――!? 私の動揺が伝わったのか、彼は少しだけ唇を離した。 「……先生、力抜いて」 低い声で囁いた彼が、もう一度キスをすると同時に、私の後ろに指先を突き入れる。 「!!!」 ビクリと身体を震わせた私の悲鳴は、彼のキスに呆気なく呑み込まれてしまった。 彼の指が、お尻の内を、ズリズリと動いている。 一種の恐怖に襲われた私は、ガタガタと身体を震わせた。 すると彼はチュッと音を立てて唇を離し、宥めるように優しく私の頬に触れる。 「大丈夫だよ、先生……身体の力を抜いて……きっと、気持ち良くするから」 「ん………」 愛惜しそうな彼の瞳に見詰められ、私は何も言えなくなった。 優しく包むように彼の唇が触れ、くすぐったいくらいに何度も何度も唇を啄まれる。 お尻に指が刺さったままで、違和感はあるが、彼のキスは気持ち良い。 すがりつくように私からも舌を絡め、快感を貪った。 キスに酔いしれていると、また彼の指が動きだし、じわじわと不快感が襲ってくる。 やっぱり尻孔は気持ち悪い。 けれど彼のキスだけは味わっていたくて、私は這い上がってくる嫌悪感に堪えた。 息が荒くなっていく。 「はふ……はふぅ……ン、あぁッ……!?」 彼の指がある一点に触れた瞬間、雷のような激しい快感に腰を貫かれた。 すっかり萎えてしまっていた息子さえ、ピクリと反応を示す。 すると彼は、最も感じるその一点を、執拗に擦り始めた。 その度に腰が跳ねるほどの快楽が襲い、嫌悪感をどこかに押し遣ってしまう。 不快だった指の感触さえ、甘く腰を震わせた。 「はあぁん……! ソコ! ダメぇえ……!!」 「駄目って言いながら、こっちは凄く吸い付いてくるぞ? ……もう一本、入りそうだな」 「んぐぅ……! ふわッ……」 指を増やされた圧迫感さえ、気持ち良い。 こんな快感は初めてだ。 力無く垂れていた自身までが緩く立ち上がり、刺激を求めてピクピクと震えている。 「もう一本……」 「あ、あぁ……は……ん……」 外だという事も忘れて、私は喘ぎながら身をくねらせた。 グポ……ジュプ…… 先端から先走りが溢れ始め、彼の指が抜き差しされる度に、卑猥な水音が響く。 私は『先生』じゃない。 それなのに、こんな行為をするのは間違っている。 頭ではそう思っているのに―― 快楽に酔った本能が、男の行為を受け入れ、離れたくないと拒否する。 男から与えられる刺激が、麻薬のように身体を支配し、私を官能で満たしていく。 「先生……」 熱い吐息と共に男が囁き、甘くしっとりと口付けてきた。 気持ち良い…… 当然のように侵入してくる舌に、私も積極的に舌を絡め、混ざり合う唾液をすする。 何度か角度を変え、次第にキスが深まっていくと、急に男の指が引き抜かれた。 恥部を広げる物が無くなり、一瞬の安堵と物足りなさを感じる。 だがそれも一瞬。 火傷するような熱い塊が、後孔に押し付けられた。 「ふッ、ん……ンんぅ……!」 嬌声が男の唇に吸い込まれる。 指よりも大きな質量を捩じ込まれ、腰がビクビクと震えた。 指で慣らされたとはいえ、奥へ奥へ突き入れられると、尻が裂けるんじゃないかと思うほど痛い。 痛い――はずなのに。 痛みを凌駕する熱さが、気持ち良い。 喜んで肉塊を受け入れた恥部が、キュウキュウと締め付けながら、もっともっとと強請(ねだ)るように蠢く。 「先生、わかる……? 先生の内が、俺のに吸い付いてくる」 最奥まで欲望を押し込んだ男が、唇を離して甘く囁き、私は夢中で頷いた。 こんな快感は知らない。 まるで、身体の内側から、ドロドロに溶かされるようだ。 「動くよ、先生……」 ゆっくりと男のモノが引き抜かれ、抜ける前にまた最奥へと押し込まれる。 「ぅあ、あ……はっ……ッ」 男の肉棒に引き摺られて、内側の皮膚が引っ張られ、快感に背中を仰け反らせた。 それで味を占めたのか、今度は性急に腰を動かし始める。 「あっ……くは……あ、あぁ……はぁん……」 ガクガクと腰を揺さぶられ、快感が脳を溶かす。 臀部(でんぶ)と男の股間がぶつかり合い、パンパンと高い音を立てた。 私の先走りか、男の先走りか、抽挿の度にズチュズチュと濡れた音が響く。 その音がまた官能を呼び、私の欲望を煽った。 心地好い喘ぎが止まらない。 「はぅ……あぁ……ヒゥッ!」 何度も突き上げられていると、突然駆け抜けた強烈な快感に、身体がビクンッと跳ねた。 なんだ、今の――? 男がニヤリと笑う。 「ここが気持ち良いんだ?」 「やっ、ちが……ふあっ……」 否定する間も与えられず、また激しく動き出した男が、先ほど強く感じた所を狙い抉ってくる。 狂わんばかりの快楽に、目が回りそうだ。 ガンガン奥を突かれる度に秘部が男を締め付け、宙ぶらりんになった足が揺れる。 「うッ……」 小さく呻いた男が、硬く張り詰めた私の自身に指を絡めた。 男の手が、強弱を付けて、私のモノを握る。 「あぅっ……んあ……も、ダメぇ……で……出るぅ……ッ!」 限界が近かった私は、男に数度扱かれただけで達した。 無意識に締め付けてしまった秘部の最奥に、火傷するような熱を感じる。 男も達したらしい。 (……やってしまった) 荒い呼吸を整えながら、ぼんやりと思う。 本来ならば許されない事なのだろうが、不思議と嫌な気はしなかった。 同じく息を乱していた男が、不意に、切ない目で私を見下ろす。 「先生……なんで、死んじまったんだよ……」 最後に呟いた男は、静かに目を閉じると、ベンチの背もたれに寄りかかった。 ……寝てしまったらしい。 男を起こさないように離れた私は、内に出された男の欲望が垂れるのを感じて、ブルリと身体を震わせた。 慌ててお尻に力を入れた私は、取り敢えず男のモノをしまい込み、できるだけ急いでトイレに駆け込んだ。 個室の便器に座り、めったに触らない後孔に指を這わせて、恐る恐る割り開いた。 男の出したものがドロリと腸壁を滑り、背筋に快感が駆け上る。 熱い息を吐いた私は、ゆっくりと恥部に指を差し込み、男の白濁を掻き出した。 「ふっ……ン……くぅ……」 敏感になっている肉壁を擦る度、私の口からは声が漏れそうになり、必死に奥歯を噛み締める。 先ほど達したというのに、私の自身に熱が集まり、ジワリと雫が滲み出す。 「はぁ……はぁ……ふぅ……」 内に出された物を掻き出していたはずなのに、いつの間にか男の指の感触を思い出し、自分で自分を犯していた。 後ろだけでは物足りなくなり、空いている方の手で、自分のモノを握り擦る。 「あぁ……ダメ……ダメ……」 ――駄目って言いながら、こっちは凄く吸い付いてくるぞ? 「うぅっ……」 男の言葉を思い出した瞬間、私は堪らず射精していた。 「はぁ……」 心地好い倦怠感に包まれながら、後始末をした私は、汚してしまった壁や床をトイレットペーパーで拭く。 手を洗ってベンチに戻った時。 そこにはもう、男の姿は見当たらなかった。   *   *   *  

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