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2会.12月11日

見知らぬ男と身体を交えてから、早くも一週間が経つ。 あの時は、まさか同性の自分が、男に突っ込まれるなど、思いもしなかった。 しかも、普段は排泄器官としか思っていなかった後孔で、あんな快楽を味わえるなんて―― 初めての官能に溺れた私は、あれ以来、男の事を考えるだけで身体が疼く。 日中は仕事に集中する事で紛らわせるが、夜はそうもいかない。 あれから毎日のように近道の公園へ足を運ぶが、あの男には一度も会えなかった。 お陰で、夜中にシャワーを浴びながら、自慰をするのが日課になりつつある。 しかもやっかいな事に、私の身体はあの快楽が忘れられないのか、後ろを弄らなければ達する事ができなくなっていた。 後孔に指を挿入しては、男の事を思い出し、あの熱い楔(くさび)を思い出す。 自分の指では、奥まで届かないのがもどかしい。 そんな狂わんばかりの劣情を持て余して、迎えた水曜日―― その日はたまたま残業も無く、定時に帰る事ができた。 コンビニで弁当を買った私は、近道である公園を通るが、やはりあの男はいない。 溜め息を着いてそのまま帰宅した私は、特に興味も無いテレビを見ながら弁当を食べ、退屈な時間を過ごしていた。 残業するのが当たり前になってしまうと、たまにできる余暇をどう過ごして良いか分からない。 休日ならば、溜め込んでいた家事をするなり、どこかに出かけたりできるが、今はもう夜である。 弁当を食べ終え、何もする事が無くなると、どうしても彼の事を考えてしまう。 『会いたかった。先生……』 男の甘く切ない声が、脳裏で鮮明に蘇る。 酒に酔っていたらしい彼は、私の事を先生と呼び、そのまま私にキスをした。 また溜め息をついた私は、男の口付けを思い出し、唇にそっと指を這わせる。 男らしい……少し固めの唇、だった。 火照った舌が、口の内に入ってきて、私の舌に絡まり…… キスの感触まで思い出してしまうと、腰のあたりがズグンと甘く痺れた。 「ン……」 『先生、硬くなってるよ?』 興奮した息子が、スラックスを押し上げ、テントを張っている。 窮屈(きゅうくつ)に感じた私は、恐る恐るチャックを下ろし、自身を引っ張り出した。 「はぁ……」 熱い息を漏らし、すでに硬く張り詰めている息子を握る。 男の事を思い出しながら、強弱を付けて擦れば、すぐにトロリとした先走りが溢れた。 『先生の、もう濡れてる……』 記憶の中の男が囁き、私の官能を煽(あお)る。 ズチュ……グチュ…… 室内に響く水音が耳を犯し、呼吸がどんどん荒くなっていく。 「んぅ……はぁ……あっ……あぁ……」 男の手付きを思い出しながら、私は快感に身体を震わせた。 私の手が、自分の手ではないような錯覚に陥(おちい)り、次第に悦楽へと上り詰めていく。 『良い眺め……』 ――そう言って、男は私にキスをした。 「うッ……」 張り詰めた男根がビクビクと震える。 けれど達するには刺激が足りなくて、もどかしい疼きばかりが、下腹部に溜まっていく。 『……力抜いて、先生』 自分の指を、記憶の中の男の指に置き換え、後孔にゆっくりと挿入した。 『ここが気持ち良いんだ?』 「んン……ふっ……ああぁ!」 あの夜の快楽を思い出しながら、射精を促すポイントを引っ掻き、私はようやく欲望を放出する。 ――また、やってしまった。 今回は早く帰宅したが、私はあの日から毎日、こんな自慰をしている。 どうしても、あの快感が忘れられない。 ――彼に会いたい。 42歳にもなって私は、自分の息子と言っても差し支えない年頃の男に、完全に溺れていた。 『先生……』 男の呼び掛けを思い出す度、胸の奥がツキリと痛む。 男が本当に会いたいのは、私ではない。 けれど…… 『先生……なんで、死んじまったんだよ……』 彼の言う『先生』が、誰かなんて知らない。 それでも、私がその代わりになれるなら…… 私の心で、天使と悪魔が囁く。 一方的に突っついてくるくせに、二人はどちらも折れてくれないらしい。 途中まではぼんやり聞き流していたが、結局、煩わしくなって頭の隅(すみ)に追いやってしまう。 そして思い出すのは、あの男の顔や声―― あの夜に味わった快楽まで思い出してしまうと、また天使が罪悪感を説き、悪魔は都合の良い言葉で誘惑してくる。 堂々巡りを続ける頭は、溜め息で無理やり打ち消した。 いっそ、あの夜の事が、全て夢なら良かったのに…… しかし、そう考えてしまうと虚しくなる。 何度目とも分からない溜め息をついて、さっさと風呂に入った私は、何気なく時計を見上げた。 22時50分…… 後10分もすれば、初めて男に会った時と同じ時間になる。 「……いる訳、ないよな?」 どうせする事も無いのだからと、適当な言い訳をして、私はいそいそと家を出た。 「……いる訳、ないよな?」 どうせする事も無いのだからと、自分に適当な言い訳をして、私はいそいそとコートを着た。 「これは、ただの散歩……ただの散歩だから……」 家を出てからも、ブツブツと自分に言い聞かせながら、私の足は真っ直ぐに公園へ向かう。 12月とはいえ、雪が少ないこの地域だと、昼はまだそれほど寒さを感じない。 それが深夜になると、とたんに冷え込んでくる。 ブルリと体を震わせて、こんな寒い日に出歩く人は、誰もいないんじゃないかと不安になった。 それでも私の胸は、勝手に期待を膨らませ、足に速く速くと急かしている。 そして、あの男が座っていたベンチへ向かうと―― いた! まだ距離があって、顔は正確に分からないけれど、恐らく間違いない。 先走った心臓が高鳴る。 誰に対しての偽装か、できるだけ通りすがりに見えるように、足が急くのを必死に宥めた。 そして男の前に立つと、こっそり彼の顔を覗き込む。 やっぱり、先週ここで身体を交えた彼だった。 今日も酔っているらしく、ほのかにアルコールの臭いがする。 男の寝息が耳をくすぐった。 逸る胸を抑え、彼の肩を軽く叩きながら、できるだけ自然に声をかける。 「君……またこんな所で寝ていると、風邪を引いてしまうよ?」 男に会えた喜びからか、彼の肩に触れる指先が、少しだけピリピリと痺れる感じがする。 こんなに溺れてしまったら、やはりもう、後には引けない。 緊張して生唾を飲みつつ、何度か声をかけると、男がわずかに呻いた。 寝起きで目をしばたたいた男は、ぼんやりとした視線を私に向け、嬉しそうに微笑んだ。 「……先生……また、会いに来てくれたんだ?」 男の『先生』と言う呼び掛けに、ツキリと胸が痛む。 あぁ、やっぱり―― 今日も私を『先生』と間違えている。 そんなに、私は彼の『先生』に似ているのだろうか? 胸の辺りがチリチリと痺れる。 もう故人らしいが、未だ彼の胸に居座る『先生』とやらに、どうしても嫉妬してしまう。 苛立つ胸を抑え、私は静かに深呼吸をした。 「――だから、私は」 そっと引かれる腕に身を任せ、「違う」と言うはずだった口を、彼の唇に塞がれる。 当然のように進入してきた彼の舌に、頭の中が溶かされていく。 このキスが欲しかったんだ。 歓喜に身体を震わせ、口腔で滑る舌の感触を堪能する。 「ンッ、ふ……んむ……」 もっともっととがっつきたくなる衝動に駆られ、私の呼吸が荒くなっていく。 それに応えるかのように、彼は何度もキスの角度を変え、私の唇を吸う。 やっぱり、彼はキスが上手い。 人違いなのだと、拒否の姿勢を貫かなければならないのに―― 気持ち良くて、理性なんか軽く振り切れてしまう。 ほんの少し、ほんの出来心で舌を擦り寄せると、彼の舌が嬉々として絡み付いてきた。 クチュ……チュプ……チュ…… 私と彼の唾液が混ざり合い、口の端から、飲みきれずに溢れ出ていく。 甘い……甘いキス。 まるで恋人同士のようなキスに、胸が熱くなっていく。 快感で力が抜けていく私は、彼に抱き寄せられるまま、彼の片膝を跨ぐように座った。 軽く息を詰めた彼は、うっとりと目を細め、おもむろに私の股間を撫でる。 「ンッ……!」 いつの間に、コートの前を開かれていたのだろう? さっき部屋で抜いてきたというのに、私の自身はすでに形を変え、男の手の中でヒクヒクと震えていた。 男の唇がニッと微笑む。 「キスだけでもうこんな……気持ち良い?」 彼の言葉に私は、顔を真っ赤に染めて頷く。 良い歳をして、恥ずかしい…… それでも、布越しに伝わる男の手の温度が気持ち良くて、思わず私は腰を揺らした。 彼の手が、スラックス越しに私のモノを緩く擦る。 「ン……は……」 ジワリと下着が濡れて、興奮に息が荒くなっていく。 早く、直に触って欲しい。 彼が小さくフフッと笑う。 そして私の耳元に唇を寄せた。 「先生、濡れてきたね……もうイきたい?」 そう言って、彼の親指が、私の高ぶりをグリッと抉る。 「あっ、あぁ……っ! ダメ……ダメ……」 強過ぎる快感に、口ではダメと言いながら、腰の奥に熱が集まっていく。 「先生……脱がせるよ?」 ベルトに手をかけた彼が、焦らすようにゆっくりと、私の下着ごとスラックスを下げた。 はしたなくヨダレを垂らした自身が、待ちきれないと主張するように、プルンと飛び出す。 羞恥と共に期待が膨らみ、ゴクリと喉を鳴らした。 熱い溜め息を漏らした彼が、私のモノを握って上下に擦る。 「ふあ……あぁん……は……」 自分で触る何倍もの快感に、堪らず身体がしなり、甲高い喘ぎ声を上げた。 彼の手に欲望を塗り広げられ、ズ……ジュ……と、卑猥な水音が辺りに響く。 後孔にまで先走りが流れ濡れてくると、自力で身体を起こしている余裕が無くなり、彼を囲むようにベンチの背もたれを掴んだ。 彼の空いている手がワイシャツのボタンを外し、インナーをたくし上げてくる。 ヒヤリとした空気が、火照った肌に心地好い。 「あっ、あ……ダメ……そんな……あっ……」 前を扱かれたまま、彼の指に後孔を弄(いじ)られ、右の乳首を舌で転がされる。 男の乳首なんて、なんであるのか分からなかったのに、彼に舐め吸われて快感を知ってしまった。 後孔も、彼の指が抜き差しされる度にヒクヒクと震え、熱が自身に集まっていく。 「あぁ……や……ふあ……はぁ、あ、あぁ……」 三ヶ所を一度に刺激され、強過ぎる快楽に、身体がビクビクと震える。 ドロドロと溢れる先走りを、ゆるりと後ろの孔に塗り込められ、さりげなく指を増やされた。 「ぅン……」 これでもかと広げられた内肉が、彼の楔(くさび)に貫かれた快感を思い出し、もっと奥に欲しいと疼く。 この一週間、ずっと彼に飢えていたのだ。 あの快感を覚えた恥部には、指だけじゃ足りない。 私は荒い呼吸で喘ぎながら、背もたれでは覚束無くなった手を、彼の頭に回して抱き締めた。 より密着した事で膨れ上がった興奮に、理性をグラグラと揺らめかせる。 「ン……もっ……もっと……もっと、奥……んあぁっ……!」 夢中で強請(ねだ)ったら、彼の指がより深く潜り込み、快楽のシコリを弄ってきた。 射精感を煽る点を刺激され、腰がビクビクと震える。 「ここ……気持ち良い……?」 低く掠れた声で囁く彼に、私は夢中で頷いた。 さっきまで私の指を挿入していた秘部が、やっと彼の指を咥えられて、歓喜にむしゃぶりつく。 内側から肉壁を押し広げられ、隙間から入り込む冷気にゾクリと震える。 気持ちが良い…… 早く熱を放出したいと訴える自身が、彼の手の中でドクドクと脈打つ。 けれど、もっと太く熱い刺激を知っている恥部は、まだ足りないと貪欲に彼を求めていた。 「あぁっ……も、欲し……入れ……て……ふわ……」 快楽と欲望で、理性をぐずぐずに溶かされた私は、恥も外聞も忘れて喘ぐ。 彼は唇の端を吊り上げ、満足そうにククッと笑った。 「先生、エロ……可愛い……」 「ン……はや、く……」 欲望に溺れた私は、火照(ほて)った頬を彼の肩に擦り付け、腰を淫(みだ)らに揺らす。 早く、彼と繋がりたい。 私の恥体に煽られてくれたのか、ゴクリと喉を鳴らした彼は、すぐさま私の秘部から指を抜いた。 「う……あ……」 咥える物の無くなった後孔が、冷えた空気に触れて、ヒクヒクと震える。 早く、早く内を擦って欲しいとヤキモキしていると、下からチャックを開く音が聞こえた。 チラリと視線を下ろして見ると、自分のモノより太く張り詰めた肉棒が飛び出し、別な生き物のようにビクンビクンと震えている。 勃起した状態を見るのは初めてだが、この太い塊が自分の内に入るのかと想像し、ゴクリと喉が鳴った。 「入れるよ……先生……」 そう言って私の腰を掴み直した彼は、うっとりと魅力的な笑みを浮かべる。 そしてゆっくりと、私の腰を下ろした。 彼の熱塊が後孔に触れ、ズズズ……っと押し込まれていく。 「うあっ……!!」 き、キた! 溶けるような熱い肉棒が、内壁をギチギチと割り開き、奥へ奥へと押し入ってくる。 「あぁっ……ン、はぁ……あぅ……!」 快感が腰を直撃して、喘ぎが止まらない。 この刺激が欲しかった。 ゾクゾク震える背中を仰け反らせ、快楽の涙を溢れさせる。 すぐに彼のモノを全て呑み込み、臀部(でんぶ)を密着させた。 「ン……先生の内……凄く、熱い……」 彼が感嘆の溜め息をつき、私の耳をくすぐる。 思わず息を呑んだ私は、釣られてキュッと恥部を締め付けた。 彼がクスリと笑う。 「動くよ……先生……」 一度グッと押し込んで持ち上げた彼は、少し腰を引いて、またすぐに私を突き上げる。 「うっ……あぁっ……や……」 気持ち良い…… 下から突き上げられるせいで自重が乗り、指なんかでは届かない、最奥まで擦られる。 他人の熱を感じて、こんなに興奮するとは、思わなかった。 「ぁくっ……ふあ……あ……」 自身から溢れる先走りが、ダラダラと後ろへ伝って、グチャグチャと卑猥な音を立てる。 熱に浮かされるまま、彼の首にしがみついた私は、彼の動きに合わせて激しく腰を振った。 次第に、彼の呼吸が荒くなっていく。 こんな張りも柔らかみも無い、おじさんの身体に感じてくれるなんて…… 私の胸は喜びに震えた。 身も心も悦楽に満たされ、煮え立つような熱が、外に出ようと下肢で暴れ回る。 灼熱の肉棒を咥え込む入口がジンジンと痺れ、股間がグズグズに溶けるような錯覚を覚えた。 「あぁっ……イく……イく……ン、あっ……!」 彼の男根に内肉を抉られ、激しく掻き回された私は、瞬く間に絶頂まで駆け上る。 「あっ、あ、あああぁぁあぁぁぁっっ!!!」 吐精の反動で、男のモノをギュッと締め付け、腹の奥に熱が広がるのを感じた。   *   *   *

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