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かくれんぼ③
松田君は、バスケ部のエースで190cmくらいの長身のイケメンだ。165cmの僕は見上げなければ彼の顔が見れない。
長身、男らしい顔つき、体つきも筋肉が程よく付いているのが密着しているおかげでよく分かる。ひょろひょろの僕とは違う。ってか、同じなのは性別くらいで後は真逆だ。
なんかもぅ、羨ましいも通り越して違う生き物みたいだ。
「…こだー?どーこーだー?」
後藤君の声がいよいよ近くで聞こえた。
次いで、勢いよくドアの開く音。
ビクッと体が震え、無意識のうちに松田君の制服のシャツを握りしめた。
「出ておいでー。悪いようにはしないよー」
声はどんどん近くなる。
わぁー!罰ゲームは嫌だ!!
どうか、どうか見つかりませんように!!
心臓が痛いくらいに鳴り出した。
目を強く瞑りすぎて、チカチカ白いのが見える。
「…んー?居ねーなー」
諦めたような声がして、一瞬力が抜けた。
ーその時。
「なーんてね!!」
ガチャッ。
ロッカーのドアの開く音が静かな教室内に響いた。
「…あら?やっぱ、居ねーか。こんな狭いロッカーに入れるわけねーしな」
ロッカーのドアの閉まる音。そして、何やらガタガタと音がして、
「お菓子あげるよー。美味しいよー。出ておいでー。...ってか、どこいるの?!」
何を探しているのか分からないような声かけをする後藤君は教室から出ていったようだ。
僕は、驚き過ぎて動けなかった。
後藤君が開けたロッカーは、どうやら僕たちのいるロッカーの隣だったのだ。
見つかったと思った!
見つかったと思った!!
見つかったと思った!!!
「…大野」
未だに松田君のシャツを握りしめたまま目を閉じている僕に、優しい声が降ってくる。
「もぅ、大丈夫」
大きな手が、頭を撫でる。
何度も何度も。何度も何度も。
優しいその声に、その大きな手に、ふーっと、体中から力が抜けていく。
そして、落ち着いてくると松田君のシャツを握りしめたままだったのを思い出した僕は慌てて手を離した。
「ごっ、ごめ、わ!し、シワなっちゃった……ごめんなさい」
パニクった僕は手でシャツのシワを伸ばそうとしたけど1度クシャクシャになったものはそう簡単には直らない。しかも、狭いロッカーの中では動ける範囲も限られている。
そうだ。狭いのだ、ロッカーの中は。
僕はまだ小柄だけど、体つきも大きい松田君と一緒に入れたのは奇跡なのだ。
「ぼ、僕、と、隣のロッカーに行くね。せ、狭かったよね、ごめん。」
恥ずかしくて、目も合わせられなくて俯いたまま早口に言う。
「……」
もぅ、後藤君も見終わった後だから戻ってくることもないだろうし。
松田君の無言に心細くなったけど、気にしないふりでドアに手をかけ、押した。
……押した。
思っていた手応えはなく、冷たいドアの感触がいつまでもあるだけで変化はなかった。
「…あれ?」
ドアが開かない…?
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