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かくれんぼ④
な、や、なんで?なんで開かないの?
ドアを押す手に力を込めるけどなんの手応えも感じない。
「ま、ま、松田君!ドア、開かないよ!?」
泣きそうになって松田君を見上げると、松田君は一瞬目を見開いて、それからゆっくりとドアに目を向けた。
大きな手がドアを押すけど、やっぱりドアは開かなかった。
「ドアの前に何か置かれてる」
「え?」
そういえば、さっき後藤君が何かガタガタ音を立てていた。ロッカーの周りには机やらが散乱していたから、それを移動して人を探していたのかもしれない。
「ど、ど、どうしよ…あ、関谷に電話」
お尻のポッケを探るけど、教室に置きっぱなしにした事を思い出した。ポッケには何も入っていない。半ば無理やりな参加だったから、何か持つ暇も無かったんだ。
「松田君、携帯は…?」
縋る思いで松田君を見上げるけど彼は首を降るばかりだ。
背中に冷たいものを感じた。
全身ピッタリと合わさった状態。同じクラスとは言え、ほとんど喋った事の無いイケメン。人見知りの僕。
…うん、辛い。
「お、大声出せば誰か気付いてくれるかな?」
緊張で声が震えたけど、気にしてないフリで言う。
何か喋らなきゃ。何か。何か話題。
「……いや、もぅちょいこのままで」
サラッと松田君は流した。
「な、なんで?」
しかも、閉じ込められているのに、このままで、とか。信じられなくて目を見開く。
「いや、あー...、罰ゲーム嫌だから?」
「…」
確かに嫌だけど。でも、ここから出られないのも嫌だよ?
僕の表情で察したのか、松田君は言葉を続けた。
「さすがに、予鈴までには誰か来るだろ」
……それも、そうかもしれない。
僕は心配症で人見知りだけど、単純だ。
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