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かくれんぼ⑤

そのまま隠れる事になったけど、気まずい。 天気の話、午前中の授業の話、家で飼っている愛犬の話、テレビの話。 そのうち話題が無くなる。探して話して…でも、続かない。松田君はほぼ相槌しか打たない。1人で気まずくて オロオロしてしまう。 携帯が無いと腕時計をしない僕にはどのくらい時間が経ったのか分からなくて…。 「...ここ」 不意に、松田君が声をだした。 僕は顔を上げて彼を見る。 松田君の大きな手が、長い指が、ゆっくり伸びてきて僕の鎖骨に触れた。 思わず、体が竦んだ。 「ほくろ」 そう言って目を細めた彼に、僕はあぁ、と思った。僕の鎖骨の右側にはほくろがある。 瞬間、恥ずかしさに顔に熱が集まる。 彼はただ、話題に僕のほくろを持ってきただけだ。背の高い彼からはシャツの隙間から見えただけだろう。なのに、触られて体が竦むなんて。 恥ずかしくて、僕はベラベラと喋った。 「そ、そうなんだ。ほくろあるんだ。...あ、ここに、もぅ一つあるんだよ」 特に意味はなかった。勝手に1人で恥ずかしがって、それを隠すように、ただ、会話の続きをしたつもりだった。僕は手を動かして自分のシャツの首部分を少し下げた。 鎖骨の右側のほくろの下10cm程のところに、それより少し小さめのほくろがある。僕はそれを見せた。 「ね?」 顔を上げると、片手で口元を押さえた松田君がいた。顔が...赤い?でも、ロッカーの中は薄暗いのでよく分からない。 僕はシャツを直した。 違う意味で凄く恥ずかしかった。 松田君と密着している体が、熱い。 松田君の匂いが、強くなる。 松田君の呼吸音、心臓の音。 狭いロッカーの、熱い空間。 松田君の視線はずっと僕に向けられている。 熱い。熱い。熱い。

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