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かくれんぼ⑦

優しく、頬を撫でられる。 「大野」 松田君の声が、さっきより近く感じる。 鼓膜を震わせ、甘い蜜になって僕の体の奥深くまで侵入してくる。 心臓がうるさい。 親指で、目のフチを撫でられる。そのまま、頬を伝い、また唇に触れた。 熱い。熱い。熱い。 体から火が出そうだ。 熱くなりだした体に、松田君のヒンヤリした指は正直心地よかった。 ...思わず、その手に擦り寄ってしまった。 ヒンヤリした手がまた頬に触れて気持ちいい。 「...ぁ!」 小さい声がこぼれた。 僕は……何をしているんだ。 急に我に返り恥ずかしくて余計熱くなった。 「...チッ」 松田君の舌打ちに体が震える。 「ご、ごめ...っ、んぅっ」 狭いロッカーの中。 密着していた体は、松田君によってさらに抱きしめられる。 「ま、松田君?」 広い広い松田君の胸の中に僕はいる。 ……なんで? 慌てて離れようにも、松田君は僕をぎゅーぎゅーと抱きしめて離してくれない。 「松田君!は、離して!」 さすがバスケ部エース。筋肉のつき方が素晴らしい。もやしのような僕とは違うって、当たり前だ。 松田君は離してくれなくて、さらにキツく抱きしめてきた。 ……心臓の音、すごいな。 僕の心臓も破裂しないか心配になるほど五月蝿いけど、松田君も負けてない。 「……」 ぶらりと垂れていた手を、松田君の背中におずおずと回す。 ぴくん、と松田君の体が反応した。

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