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かくれんぼ⑧

「大野」 潰されそうなほどの力で抱きしめられ、苦しさに ぐぇってカエルみたいな声が出て恥ずかしかった。 「な、何?」 何事も無かったように聞き返すと、ふふっと笑い声が耳元で聞こえた。 顔が赤くなったけど、僕も笑ってしまう。 ...ほのぼのしてしまったけど、なんだ、これ。思わず抱き返しちゃったけど、これで良かったの?…でも、松田君にこうして抱きしめられるの、気持ちいいな。 体から力が抜けていく。 「大野」 名を呼ばれ、思わず顔を上げる。 気持ち良さに、緩んだ顔を。 「...やっと、こっち見た」 「あ!」 僕を見下ろす松田君は、優しい表情で笑っていた。 あぁ、そんな表情されたら…目が離せない。 松田君、まつ毛長いな。よく見たら、目尻に小さなホクロがある。涙ボクロ。 鼻も高くて、唇は少し薄めだけど、そこがまた格好良い。 その唇がゆっくりと近づいてくる。 あ、もぅ少しで触れそ……触れそう? 瞬間、我にかえった僕はアゴを引いて離れた。 ガタッ。ゴンッ。 無理に動いたので、ロッカーが不穏な音を立てて少し揺れた。 アゴを引いた拍子に、僕のおデコは松田君にぶつかる。 「……っ!」 おデコにじんわりとした痛みが広がって…… 「ご、ごめ、び、びっくりして」 顔を上げると、松田君が目を閉じて痛みに耐えていた。 「ご、ごめんね...?」 「ん」 急に近づいてくるからビックリした!あんなに近いとキスしちゃ……キス!? かぁーっと顔に熱が集まる。 な、なんで松田君はあんなに顔をち、近づけ...いや、そんな。たまたまだ。僕の勘違いに決まってる。そんな意味のない事、松田君がするわけない。 1人ブツブツ言ってると 「あ、やっぱ、痛い」 「え?大丈ー...」 「うそ」 顔を上げた僕のすぐ目の前には、優しく微笑む松田君の顔。 「...ぇ?」 掠めるように触れたのは一瞬で。 唇に感じたのは、柔らかな感触。 僕は、ずっと松田君の瞳を見ていた。 「可愛いな、大野」 やっぱり優しく微笑む松田君は、また、ボクの唇に自分の唇をくっつけた。 ……あれ?これ、なんだ?松田君の... 松田君の唇と理解して離れようとしたけど出来なかった。松田君の大きな手が僕の頭を固定してしまったから。 「...んっ...ま、松田君...っ!」 「...」 僕の抵抗を難なくスルーして、キスは続いていく。 優しく、啄むように何度も何度も。 唇を噛みしめ、目をギュッと閉じて、僕はガチガチになって松田君のキスを受けた。 「...ふ。大野、固くなりすぎ」 柔らかい笑い声。チュッと、こめかみに唇が触れる。そのまま おデコ、瞼、鼻、頭。キスの雨。 「な、なん...?」 頭がグルグルして、深く考えられない。 「大野、可愛い」 「ふぁっ?」 「...もっと、していい?」 「ふぇっ?」

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