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かくれんぼ⑨
にこやかに笑った松田君の顔を見て、こんな笑顔初めてだから、思わず見とれてしまった。
イケメンだー。
「大野、口、開けろ」
言われるままに、口をあーんと開ける。
「いい子」
にっこり笑った松田君がまた近づいてくる。
なんで、口開けるんだろ...?
……あれ?これ、僕、やばい...よね?
でも、動けなー...
ガッタン!ガチャッ!!
「お、やっぱ居た!松田と大野見ー...」
いきなりロッカーのドアが開いて、後藤君が笑顔でこっちを見ていた。
目の前の僕と松田君は、あともう少しでキスできる距離だ。
後藤君は、固まった。
僕も、固まった。
「邪魔すんな」
冷静だった松田君はそう言うと、再びロッカーのドアを自ら閉めた。
何事も無かったように、再び近づいてくる松田君。
「む、無理無理無理...っ!」
何、そのスルースキル!!
僕には真似出来ないよ!!!!
ぶんぶん首を降る僕に、松田君は冗談だと言って離れたけど目は笑っていなかった。
安心して胸をなでおろすと、にやっと笑って再び近づいてきて……
ちゅぅっ。
耳たぶの下に吸い付いてきた。
「ふゎっ!?」
ちくんとした微かな痛み。
「ま、松田君...?」
「んー」
ベロンとそこを舐めて離れていく。
「印」
「し、印?」
「ん。」
「な、なんの?」
「俺のって」
「ふゎっ!?」
そう言って笑う松田君に僕の心臓はもっていかれた。どきゅーん。
「あ、あのー。お取り込み中すみません」
控えめなノックと共に声がかかる。
後藤君だ。
「何?」
「な、何って!今、かくれんぼの途中でしょーが!お、大人しく2人ともでてこいっ!イヤラシイ事すんな!」
「ごとぉー?松田達いたー?」
やんや騒ぐ後藤君の声を聞きつけたのか、他の声も聞こえてきた。
「た、大変だっ!こいつら、ロッカーの中でいちゃこらしてやがるっ!」
「はぁ?何馬鹿なこと言ってんの。ロッカーに2人も入らねぇだー...」
どうしようかとオロオロする僕とは違い、松田君は至って普通にロッカーのドアを開けて出てしまった。
驚き目を見開く後藤君、矢沢君、佐伯君、小沢君、鹿島君、花木君、関谷、田崎君。
僕は恥ずかしくて俯いて松田君の後ろをついてった。
「...君たちはあれかい?どっかの国の雑技団の人なのかい?」
矢沢君の問いかけに、松田君は鼻で笑った。
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