9 / 10

かくれんぼ⑨

にこやかに笑った松田君の顔を見て、こんな笑顔初めてだから、思わず見とれてしまった。 イケメンだー。 「大野、口、開けろ」 言われるままに、口をあーんと開ける。 「いい子」 にっこり笑った松田君がまた近づいてくる。 なんで、口開けるんだろ...? ……あれ?これ、僕、やばい...よね? でも、動けなー... ガッタン!ガチャッ!! 「お、やっぱ居た!松田と大野見ー...」 いきなりロッカーのドアが開いて、後藤君が笑顔でこっちを見ていた。 目の前の僕と松田君は、あともう少しでキスできる距離だ。 後藤君は、固まった。 僕も、固まった。 「邪魔すんな」 冷静だった松田君はそう言うと、再びロッカーのドアを自ら閉めた。 何事も無かったように、再び近づいてくる松田君。 「む、無理無理無理...っ!」 何、そのスルースキル!! 僕には真似出来ないよ!!!! ぶんぶん首を降る僕に、松田君は冗談だと言って離れたけど目は笑っていなかった。 安心して胸をなでおろすと、にやっと笑って再び近づいてきて…… ちゅぅっ。 耳たぶの下に吸い付いてきた。 「ふゎっ!?」 ちくんとした微かな痛み。 「ま、松田君...?」 「んー」 ベロンとそこを舐めて離れていく。 「印」 「し、印?」 「ん。」 「な、なんの?」 「俺のって」 「ふゎっ!?」 そう言って笑う松田君に僕の心臓はもっていかれた。どきゅーん。 「あ、あのー。お取り込み中すみません」 控えめなノックと共に声がかかる。 後藤君だ。 「何?」 「な、何って!今、かくれんぼの途中でしょーが!お、大人しく2人ともでてこいっ!イヤラシイ事すんな!」 「ごとぉー?松田達いたー?」 やんや騒ぐ後藤君の声を聞きつけたのか、他の声も聞こえてきた。 「た、大変だっ!こいつら、ロッカーの中でいちゃこらしてやがるっ!」 「はぁ?何馬鹿なこと言ってんの。ロッカーに2人も入らねぇだー...」 どうしようかとオロオロする僕とは違い、松田君は至って普通にロッカーのドアを開けて出てしまった。 驚き目を見開く後藤君、矢沢君、佐伯君、小沢君、鹿島君、花木君、関谷、田崎君。 僕は恥ずかしくて俯いて松田君の後ろをついてった。 「...君たちはあれかい?どっかの国の雑技団の人なのかい?」 矢沢君の問いかけに、松田君は鼻で笑った。

ともだちにシェアしよう!