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第4話
ヘルバスの後姿を目で追いつつ、レイレスは片手を空へと伸ばした。と、同時に一声鳴き、エニーロがその指先に降りた。
「どこから見ていた?ファーロ」
エニーロの頭を指先で撫でながら、静かに背後から現れたファーロに問いかける。
膝をつき、頭を下げるファーロの表情は曇ったものだった。
「何が言いたい」
ファーロを顧みると、レイレスはヘルバスから預かった短剣を懐へ仕舞う。
「私が人間に興味を持っていることを案じていたな」
「……はい」
レイレスはその返答を聞くなり、ぷっと笑い出す。
「いまさら、人間になろうとも、この国を滅ぼそうなんて事も、考えてないよ」
ファーロは顔を静かに上げる。微かに寄せられた眉間。顔半分を覆う眼帯に手を伸ばし、レイレスは唇を結ぶ。
「お前の忠誠は消えうせてはいないな?」
その眼帯の下にあるものこそ、忠誠の証。前国王であったレイレスの父、ファロマイズに刳り貫かれた傷跡。
知っているのは、当時まだ幼子だった三人の姉姫と、物心もつかぬほどの赤ん坊だったレイレスだけである。
「…仰せのままに」
「よし」
ファーロの顎を掴み、「立て」と小さく呟く。言われるままファーロは立ち、レイレスを見下ろした。
「俺の不在を預ける。ファーロ。何があろうとこの城を守れ」
ファーロは、微笑を浮かべる。
「御意」
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