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第10話

 深い樹々の合間を縫うように馬は駆けた。 「レイレス様、もうすぐです…!」  シューフの声に、途切れそうな意識を覚まされ、レイレスは薄っすらと双眸を開いた。  次々に過ぎて行く樹々の影に、何か黒いものが見え隠れしている。  時折、その黒い影にみえる二つの青の輝き。  獣。  青い目をした獣が、馬と並走している。  片腕で綱を手繰るシューフは、気づいているのか、いないのか、その顔を見れば蒼白で真っ直ぐに目前だけを見ていた。  赤い血の滴るその瞳が、金に輝いている。  吸血の族の証。  レイレスは目を閉じた。  先ほど、己を睨みつけろと言った男、バル。  奴は、血を見れば金に輝く習性を持つ吸血の族の証。それが狙いだったのか。  レイレスは唇を噛み締めた。  未だ、吸血の族としての証が、己には無いのだ。  幸か不幸か、それが我が身を救ったのか。  一国の王の身でありながら、その証が己には無い。  ふと、握りしめたままの右手を見た。そこにあの短剣があった。 『その短剣…、…なるほど』  男は、知っていたのだ。この短剣の本来の主を。 『幻朧』  この旅を襲った一団。  人間では無かった。おそらく同じ吸血の族でも無い。  獣の力を持つもの。  翼を持つもの。  いずれは滅ぼす。  そう、男は言っていた。

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