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第16話
ディーグは双眸を見開き、レイレスから目を離すと声の主を探した。
レイレスも、声のした方へと向き直る。
そこにいたのは、あの銀の髪をした男だった。
「エィウルス!このガキは吸血だろうが!」
ディーグの声に、周りの男たちは騒然となった。レイレスも、はっと己の手を見、双眸を庇った。
今、己の瞳は金の色を示しているのか。
「らしいな」
「らしいな、っておまえ、何ともないのかよ!?」
ディーグは取り囲んだ男達に分け入り、エィウルスと呼ばれた男へと詰め寄った。
「そのようだが。だから、そいつをここまで運んだんだが」
「鴉と一緒にあの崖から落ちてきやがったんだろう?あいつら、ついに吸血に手を出しやがったのか?」
エィウルスの手にあった血に染まった布を取り上げると、ディーグはそれをレイレスへ投げつけた。
ゴトリ、と音を立てて落ちたのは、あの、鴉の死体だった。
「吸血だと?ふざけるな。だったら、なぜエィウルスは…おい、ガキ!」
「レイレスだ」
「なんでもいい。いいか、今から貴様を殺す。俺は面倒が嫌いなんだ。悪く思うな」
ディーグは傍らに立っていた男の剣を引き抜き、レイレスに近付く。
レイレスは迫るディーグに対し立ち上がろうと膝を付いた。
「待て。ディーグ」
その背後から肩を掴み、ディーグを押し返し、エィウルスはレイレスに近づいた。
「なに…を…」
銀の髪が、目前に振りかかるのをレイレスは見た。
「…ん…っ」
唇を、唇によって塞がれていた。
押し付けられた胸を押し返そうと藻掻くが、逞しい体躯はレイレスの倍はある。
ほどなく、レイレスの唇を塞いでいた唇が離され、エィウルスと呼ばれた男はディーグを含む男達の群れに言い放った。
「…これは俺のものだ。なにかあれば俺が殺し、捨てる。いいな」
これは、助かったのか。
レイレスは息を飲み、男の銀の髪が目前で揺れるのを見ていた。
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