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第17話
驚愕の眼差しを向けていたディーグは、舌打ちをするなりレイレスとエィウルスと呼ばれた銀髪の男に背を向ける。
「構わねえけどよ、エィウルス」
ちらり、と振り返った。
「飽きたら俺に言えよ。そいつは俺が殺す。あいつの時と同じだ。分かったな」
あいつ?
ディーグはレイレスを睨みつけた。
「…ああ」
エィウルスは、何かを思い出しているのか、低い声で返事をした。
返事を聞くなり、ディーグの眼差しから、鋭さが消える。
「ガキ。命拾いしたな」
「レイレスだ。お前だって、俺と大して…」
「おっと、俺はもっと生きてるぜ」
手をひらひらと振って、ディーグは男達を引き連れ、部屋を出て行った。
「なんで、あんなことしたんだ。あんた…」
レイレスが言いかけたところで、エィウルスは一瞥をレイレスに向け、そのまま部屋を出ていく。
「あ…!おい!聞いているのか?」
追って、外へ出ようとしてふと視野の片隅に転がったままの巨大な鴉の死体を見た。
昨晩の強烈な喉の渇きはもう無い。
無理矢理に塞がれた唇を思い出し、拭う。
俺を、女のように。
少女のような華奢な体躯。
レイレスは唇を拭った指を握りしめ、震えた。
外へ出てみれば、そこは深い森の中だった。
樹々の僅かな隙間から、木漏れ日が入り込む。
細く鋭い陽射しを瞳に受け、レイレスは瞳を細めた。
気がつけば、斬られた胸は包帯で包まれていた。あの中の誰かがやったのだろう。
水が浴びたい。
顔も、髪も、土埃を浴びたままで気持ちが悪かった。
「水場なら、この先に小川がある。散策ついでに行ってみな」
不意に背後から声が上がった。
振り返れば、ディーグが木立に凭れ掛かり、レイレスを見ていた。
「俺を自由にするのか」
そう応ずれば、ディーグはハッと一息笑った。
「自由に見えるか?ガキ、俺の気配に気づかなかったお前が?」
言われて、レイレスは辺りを見渡した。
そこにはただ深い森が広がっていた。静寂が、耳を詰める。
「俺らをただのゴロツキだと思うなよ?」
まあ、行って来い。そう言ってディーグは小屋の中へと戻っていった。
少し森の中を行くと、水の流れる音が耳に触れた。水音の元をたどれば、昨晩の風景が甦った。
柔らかな芝が足元に広がる。
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