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第22話
小屋に戻ったエィウルスは、ベッドにレイレスを横たえ、床の上に座った。
他に、小屋に戻るものは誰一人居なかった。
時折上がるレイレスの呻きが、仮眠を取るエィウルスの意識を現実に引き戻した。
見れば、外は白け始めていた。
夜が明けていく。
エィウルスはレイレスがまだ目覚めぬ事を確認し、外へ出た。
小屋の外では、ディーグが木立に寄りかかりエィウルスを待っていた。
「よぅ、ガキはまだ眠りの中か」
「あぁ」
「どうするつもりだ、エィウルス」
「…どうする、とは?」
ディーグはエィウルスへと向き直る。
「奴らはもう動き出している。…あのガキがここへ来たのも、何かの罠かもしれない」
「罠?何のための」
「お前を誘き出すための罠だ。エィウルス」
ディーグは断言し、その指をエィウルスの胸元に突きつけた。
「…だとしたら、俺は既にあいつを殺しているはずだ」
「エィウルス、お前、もう血に狂わないのだとでも?」
「そんなもの、行ってみなければわからない」
エィウルスの言葉を聞くなりディーグは言葉を失った。
「待てよ、行くって、…まさか」
「あぁ、あいつを、あいつの住処まで送り届ける」
「ばっ、馬鹿か、お前?だからそれが罠だって言ってるんだ」
エィウルスの胸を突く指に、力がこもる。
その指を服ごと握り、エィウルスを引き寄せた。
「お前があのガキにあいつを重ねているのは知っている。お前が、あいつにどんな思いを寄せていたのかも、俺は…」
言いかけて、ディーグは口を噤んだ。
「…悪い。忘れてくれ」
エィウルスの胸元を掴んでいた手を離し、ディーグは詫びる。
「かまわない」
「俺は…お前を失いたく無いんだ。エィウルス」
小さく俯いたディーグの肩を叩き、エィウルスは小屋へと足を向ける。
「俺はいつでもお前の元に戻るだろう、ディーグ」
「…そう、だったな」
「心配など、無用だ」
ディーグの肩を叩いたその手を上げ、エィウルスは小屋の中へと戻っていった。
ディーグはその後ろ姿を、目を細め見た。
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