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第24話

「お前を抱きたいと、そう言ったまでだ」 「っ…」 「どうしたらお前を奪えるか、分からない。…お前が姫ならば、もっと、簡単だっただろうに」  言って、エィウルスの唇がレイレスを塞ぐ。 「!…んっ…」  拒否するレイレスの唇をあっさり離れ、エィウルスは続けた。 「お前が姫ならば犯して、子を孕ませ、連れ去ってしまえばいい。そう、簡単だった」 「な…っ」 「お前の誇り高さはお前を地位を表しているんだろう。お前がどれほどの高さの地位にあるのか分からない。…そんなもの、知らない」  エィウルスの広い胸の中で、少しでも距離を離そうとレイレスは藻掻いた。  だが、長い腕に囚われ、無駄に終わる。  あっさりと己を捕らえるその銀の瞳をレイレスは睨み上げた。  群青色の瞳が揺れるのをエィウルスは静かに見下ろす。 「俺、は…っ」 「俺は、お前が男だろうと、そんなもの構わない。お前がその誇りにしがみ付くならば、その誇りごと引き摺り下ろすまで」 「…っ…」  告げるエィウルスの瞳が本気であることを、レイレスは感じていた。  一言でも否定をすれば、間違いなく、この男は自分を暴くだろう。  その言葉通り、男である自分を抱くつもりだ。 「…なぜ、俺なんだ」 「なぜ?」 「お前のことなど、俺は何も知らない。同じように、俺のことなど、お前は何も知らないだろう…!」  エィウルスの腕の中で、一気に、一息にレイレスは告げる。  そして息を吸い込んだ時だった。 「…ぁっ!」  声を上げ、気付けばレイレスはベッドに、強く押し付けられていた。  両の腕を捻り上げられ、レイレスは痛みと同時に悲鳴を上げた。 「…い、や、やめ…!」 「姫のように泣いて見せるか。嫌々と、俺に泣いて乞うか…?」 「…っ」 「俺は、言ったはず。お前が女であろうと、男であろうとそんなもの構わないと」  エィウルスの瞳は、まっすぐにレイレスを見ていた。  銀の輝きは、揺れること無く見ている。 「…だが、それが俺である必要はないだろう…!」  レイレスは、否定を口にした。  言ってしまった事を後悔したが、銀の瞳は一向に揺らぎはしなかった。 「お前である必要…か」  ふと銀の瞳が伏せられる。 「……?」  言葉を失っていたレイレスは、その伏せられた瞼を見ながら、次の言葉を探す。  唇が動くその前に動いたのは、エィウルスだった。 「確かに、お前である必要はない…。そして、お前には理解できないだろうが、俺にはお前しか見えていない」  その目を見開き、レイレスは銀の双眸を見た。  レイレスは、言葉の意を理解できなかった。 「何を…言っているんだ?」  銀の双眸は痛みを堪えるように、レイレスを見ていた。  唇に触れる指先も、微かに震えているように感じた。

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