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第27話
レイレスは、小さく嘆息を吐いた。
地を見やり、再び男達へ目を向けると、ふと、一人の男と目が合った。
色の濃い金の髪をした男は、レイレスが見つめ返すと元のように前を向き、進んだ。
「…?」
何か言いたげな男は、もう二度とレイレスを見なかった。
日は落ち、火を囲むように男達は散会した。
闇の中に姿を消す者、木々の上に登る者、様々だった。
「火が見える距離なら、どこにいても構わないぜ」
そう言い残し、ディーグも闇の中に消えていく。
火の番は、その傍らにいる男が担っているようだった。
時折爆ぜる火の粉を見ながら、レイレスは木陰に座した。背を木立に凭れると、揺れる炎が瞳に映る。
ふと、音も無く誰かが傍らに座った気配を感じて、見れば、エィウルスが片膝を立てて目を瞑るところだった。
僅かに俯いたその顔を見れば、炎に照らされて銀の髪の合間に長い睫毛が伏せられていた。
邪魔をするつもりもなく、レイレスが再び炎に目を戻す。
声が上がったのはそうして間もない時だった。
「…眠れないのか」
再び見れば、銀の双眸がこちらを見ていた。
薄っすらと細められているのは、笑みなのか、炎が眩しいからなのか。
「いや。邪魔をしたか」
悪い、と顔を背けるその頬に、エィウルスは手を伸ばした。
「なに…」
顎を掴まれ、上向かされると、白銀の双眸と視線が交わる。
動揺を隠せず揺れる視界で、更にエィウルスの腕が伸びてくる。
「あ…っ」
その胸の中にあっさり引き寄せられると、レイレスは狼狽えた。
「おまえ…なにを…」
肩を抱き寄せられ、動けずに言葉ばかりが焦る。
「血が欲しいのか」
低い囁きが、耳もとに零された。
その言葉に、レイレスは手で双眸を庇う。
「誰も気付いてはいない。…こちらへ来い」
外套をレイレスの頭に被せると、エィウルスは木々の合間へレイレスを招いた。
木々の影を縫うように闇を行くと、やがて真の闇の中に居た。
炎など、すでに見えない。
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