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第32話
「…っ」
レイレスの喉に熱いものが込み上げた。
「見るな…!」
悲鳴にも似た声を上げ、レイレスは顔を塞いだ。
視野が、白く滲む。
「なぜ…っ、なぜ…だ…っ」
嗚咽を隠すことなく、レイレスはエィウルスに吐き出す。
その胸を突いても、虚しく拳は跳ね返る。
「なぜ、俺なんだ…!」
握った拳を瞼に押し付けると、濡れていた。
「なぜ…!」
気付けば、静かに白銀の双眸が見下ろしていた。
レイレスが息を飲む。
そっと、エィウルスはその唇に口付けた。
「…っ」
レイレスは力強く睨みあげる。だがエィウルスは静かに見下ろしていた。、
「お前を抱くことに、理由など必要ないと言ったはずだ」
「…!」
「お前を抱くのは、お前が女のような姿をしているからでも、その変わりということでもない」
「なにを…」
「跪いて、お前に服従すれば、お前は手に入るのか」
見つめる銀の瞳が細められる。
「お前に血を与え、その代償に俺はお前を抱く。お前たち吸血は、皆そうなのか」
『皆』という言葉に、レイレスは違和感を覚えた。
「…おまえ…」
長い指が、唇をなぞる。
「…おまえ、誰のことを言っているんだ?」
「……」
問うレイレスに、エィウルスは答えない。
ただ、なぞるその指は震えていた。
閉じられた瞼も、銀の睫毛が震えるのを、レイレスは見た。
「…エィウルス…?」
閉じられたままのその瞼に触れようとして、眼前に挿頭した瞬間。
乱雑に、その手をエィウルスは掴み、捻るように地へと押し付けた。
「!…っつ…ぁ…!」
エィウルスの唇がレイレスを塞ぐ。
強引に抉じ開け、舌がレイレスの咥内を蹂躙する。
「…ん、ぅ…っ、ん…!」
小さなレイレスの口を壊すように、エィウルスは口付けた。
「ん…、く、ふ…」
息が出来ずに意識が遠のく。
眩んだ意識の中、唾液を引いて、エィウルスが離れた。
「あ…ふ…」
胸が楽になり、大きく息を吸う。白い己の胸が見えた。
エィウルスが、身を離したのだと思った。
膝を、撫で上げるような感触が奔った。
「…?」
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