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第35話

   月が出ている。  白い闇が、辺りを青く照らしていた。  エィウルスの腕の中で、ぼんやりと闇を見ていたレイレスは、ふと身を捩りその伏せられた瞼を見た。  長い銀の睫毛は、月光の薄光に僅かに輝いている。  穏やかな夜風が、時折肌を撫でる。  一糸纏わぬ姿のまま、いつか抱かれていた。  開かぬままの瞼に、眠っているのだとレイレスは腕の中からそっと抜け出す。  身体の中心がまだ疼いている。  だが、それは嫌悪するものではなかった。    月明かりを頼りに、水音の在処を探すと、その小川はすぐに現れた。  静かに、水温を確かめるようにして入ると、水底に膝を着く。  月光に照らされる肌が、水面に青く映る。  その肌を流し、髪を解いた。  静かに、水音と共に時までもが静かに流れていくのをレイレスは感じた。  先程までの熱く昂ぶった身体が、静かに冷やされていく。  目を閉じ、せせらぎに耳を傾けている時だった。 「このような所にお出ででしたか」    背後で、聞き慣れぬ声が響いた。

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