39 / 61
第38話
「そこまでだ」
頭上で声が響いた。
白い閃光が煌めく。
同時に、男の呻きが響いた。
低い音ともに衝撃が走り、レイレスの上から男が消える。
目を瞬かせたレイレスの前に現れたのは、ディーグだった。
片手には、剣を振り、滴る血が舞った。
「よう、ガキ。無事か。…そんな格好だから、狙われんだぜ」
レイレスに向かって告げるその言葉とは裏腹に、その目は、鋭く闇を見据えている。
「なあ?お前も、我慢できなかったみたいじゃねえか。ウルボス」
ウルボス、と呼ばれたのが先程の男のことかとレイレスは察知した。
ディーグの見る闇の先に、ウルボスがいることを確信したものの、レイレスには見えない。
真の闇が広がっていた。
影も、人の気配さえ無い。
レイレスには感知できなかった。
ふと、耳に何か触れた。
男の低い呻きが、闇に響いている。
「なり損ないが。俺に勝てると思うなよ」
ディーグの声と共に、その呻きは唸りへと変わった。
その手に握った剣をディーグは振り上げた。
同時に、闇が動いた。
金の毛並みが、目前を掠めた。
ディーグと同等程の巨大な獣が、ディーグの刃に齧り付いていた。
ともだちにシェアしよう!