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第38話

「そこまでだ」  頭上で声が響いた。  白い閃光が煌めく。  同時に、男の呻きが響いた。  低い音ともに衝撃が走り、レイレスの上から男が消える。  目を瞬かせたレイレスの前に現れたのは、ディーグだった。  片手には、剣を振り、滴る血が舞った。 「よう、ガキ。無事か。…そんな格好だから、狙われんだぜ」  レイレスに向かって告げるその言葉とは裏腹に、その目は、鋭く闇を見据えている。 「なあ?お前も、我慢できなかったみたいじゃねえか。ウルボス」  ウルボス、と呼ばれたのが先程の男のことかとレイレスは察知した。   ディーグの見る闇の先に、ウルボスがいることを確信したものの、レイレスには見えない。  真の闇が広がっていた。  影も、人の気配さえ無い。  レイレスには感知できなかった。  ふと、耳に何か触れた。  男の低い呻きが、闇に響いている。 「なり損ないが。俺に勝てると思うなよ」  ディーグの声と共に、その呻きは唸りへと変わった。  その手に握った剣をディーグは振り上げた。  同時に、闇が動いた。  金の毛並みが、目前を掠めた。  ディーグと同等程の巨大な獣が、ディーグの刃に齧り付いていた。

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