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第44話

 沈黙が、男達の群れを支配した。  眉を寄せたディーグは、腕を組み、痺れを切らしたように口を開いた。 「…エィウルス、わかっているな」 「ああ」  レイレスは二人を見る。変わって、周りの男達が不穏な空気を出していることに気付いた。 「おい…?」  レイレスが、再び二人に目を向けると、エィウルスはレイレスに一瞥を向け、真逆に一人歩き出した。 「…?エィウルス…?どこへ?」 「あいつは、ここまでだ」 「は…?だから、どこへ…」 「あいつなりに考えるさ。ここから先へは、俺がお前を送り届ける。文句はナシだ」  行くぞ、言ってディーグは歩きだす。 「待て…だが、エィウルスは…!」 「うるせえ…!別れの口付けの一つでもすれば、黙るのかお前は…!」 「…な…っ」  レイレスは次の言葉を失い、下を向く。  かっと、耳が熱くなるのをレイレスは感じていた。  知っているのだ、エィウルスと、己の関係を。この男達は。 「…悪いな。お前は何も悪くないんだ。あいつも、最後に接吻の一つくらいすりゃあいいのに」 「…」  沈黙したレイレスの背中を、ディーグは押した。 「おし、行くぜ。悪いが、助けるのは後。お前を領地に戻すのが先だ」 「あぁ」  揺らめく人影を見、レイレスは足を進めた。

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