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第47話
「まさか…」
疑うしか無い。
あまりにも、その髪の色に似た獣の色。
「エィウルス…?」
「くっ、くくく…」
レイレスの背後で、低い笑いが響いた。
見ればバルが、目を輝かせ笑っていた。
「…傑作だ。まさか、この地で本当に目の当たりにできようとは…」
真意は分からないが、この惨状を招き、喜んでいるのは瞭然だった。
「半獣めが、よほど血に飢えていたとみえる。見ろ、もう半分は殺したぞ…」
「…っ」
「よせ、レイレス…あいつは…もう…!」
「行かなければ…!行って、止めなければ…俺は…!」
臣下が殺されるのを黙って見届けるしかないのか。
ただ殺す様を、見るしか術は無いのか。
「駄目だ…あいつは、もう…吸血を獲物としてしか見ていない…!」
抱き留めるその腕を突き放し、レイレスは駆け出していた。
「レイレス…!」
悲鳴のような呼び声を背後に聞いた。
違うのか。
あの指は、俺を抱くためにあるんじゃなかったのか。
何度も口付けるあの唇は、俺を求めるものじゃなかったのか。
「エィウルス…!」
気付けば、剣も、何も手にしていなかった。
丸腰で敵う相手では無いはずだった。
とんだ阿呆だと、迫ってくるその銀の影を見てレイレスは思った。
紅い。
紅い渦を巻く双眸は、間違いなくエィウルスのものだった。
獣は地を蹴り、その爪がレイレスに伸びる。
紅い。
その牙が、目前に迫る。
「…エィウルス…」
確かめたかった。
あの時、どうして何も言わなかったのかと。
目を閉じると、世界は暗転した。
確かめたかった。
もう会えないと絶望した自分の思いを、お前も抱いていたのか、と。
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