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第48話

「…?」  何か、光る虫が蠢いている。  レイレスは、ぼやけた視界で、それを見つめた。  違う。  あれは炎だ。  蝋燭が、揺れている。  段々と明瞭になっていく視界の中、蝋燭に囲まれていることに気付いた。  闇。  深い闇が、小さな蝋燭の灯りでこの体の周りだけ照らされている。 「……」  ここは、何処だろうか。  自分は、何をしていたのだろう。  先程まで、気付くまで、何をしていたのか、霞がかって、思い出せない。    目を擦る。  間違いない。これは自分の手だ。  白く、少女のような腕。 「…気付いたか」  男の低い声が響いた。 「…!」 「まだ、動けまい。そのはずだ。お前は新たな生命を吹き込まれたのだから」  闇の中から、手が伸びる。  手を掴まれ、そのまま引き起こされた。  再び闇に目を凝らすが、そこには闇が漂うだけだった。 「…っ」  痛みが、胸を奔る。  熱い、灼熱のような。 「…つ…っ」  触れれば、自分のものでは無いかのように、痺れた違和感だけが肌に残る。 「何を…した」  何か、身体に細工をされた。  吹き込むとは、そういうことか。  一つの蝋燭が、そっと宙を漂う。  痛みを堪えながら追えば、目前で、それは留まった。 「見るがいい。お前の、新たな生命の証を」    それは痛む胸の前に、灯されていた。  白い胸が、そこにはあるはずだった。 「…な、に…」 「喜べ。…お前は今この時から、『幻朧』に選ばれた騎士の一人だ」

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