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第4話

これまで必死にこの会社に尽力してくれていた皆を路頭に迷わせるわけにはいかない 私は彼の手を借り必死に動いた まだ若輩者の私にあからさまに向けられる敵意を一身に受けながらも私は走り続けるしかなかった 彼は私の秘書として誰にも物を言わせないほど仕事を完璧にこなした そんな彼と私の関係を知るものは会社では少なかったため彼にも私にも多くの縁談の話が持ってこられた もちろん私たちはそれを受けるつもりもなく只管にただ只管に進むのみ 自宅に戻れば父がいなくなった今母親は床に伏しそれ幸と私たちを口撃するものも少なからずいた 父を尊敬し愛し支えてきたものたちからするとその血を繋ぐことができぬ私に嫌悪を表すのはそうおかしくはない そんな私たちの理解者の1人に桜雨の父がいた 彼は私が幼い頃から支えてくれていた私の世話係だった 彼は外に家族がいてなかなか子宝には恵まれなかった。だからなのか彼は私を我が子のようによく世話してくれた その彼が私が大学に入る少し前待望の子供にようやく恵まれてそれから首が座った頃息子を屋敷に連れてきた。玉のような男児。父に良く似た凛々しい面立ちと母親譲りの透き通るような肌の色。私も年の離れた弟ができたようでとても嬉しかったことを今でも覚えている 彼はすくすくと育った。しかし突然の母親との別れがきた。体の弱かった桜雨の母親が病死したのだ。眠るように横たわる姿を桜雨はただただ真っ直ぐに幼いのに涙を必死にこらえじっと見つめていた。 彼らに他に身寄りはなく自宅に戻るのにはあまりにも哀しくて父は彼らを住み込みの使用人とした。 幼い桜雨。それなのにきっちり教育もなされ長くいる使用人より学もあった。そんな桜雨をたいそう気に入った父は私の従者としたのだ 幼かったはずの桜雨が何故私と過ごした彼のあのときのことを知っているのか?

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