16 / 28

第4話④ ※

 相手の服の中へ手を滑り込ませ身体の隅々を優しく手で愛撫するコウ。  その手の動かし方に身体が過敏に反応して声が漏れてしまう。触られる事が気持ちが良いルゥは、彼に身体を擦り寄って顔を見上げた。 「……コウ。もっと、もっとッ」  触って欲しいと甘えてコウの顔に近づくと、相手の唇を一舐めした。  まるで接吻を求めるように―― (……このッ)  ルゥから求められた舌に答えるとコウもそのまま、少年の口の中へと舌を入れた。 「……はぅ、ん……」  小さい舌にコウの舌が絡み合う。手はいまだに身体を愛撫してくる。  それがもどかしい。さっきまで高熱のように動かなかったのが嘘のように、今はコウを求めている。  それに対して恥ずかしさはなかった。それよりも、相手を自分自身が欲していたからだ。 (俺、変だ……でも……)  もう、理性と気持ちが止まられない。 「コ…ぅ……触る……やらッ」 「触られるの嫌なのか?」  ルゥは首を横に振る 「ちがっ……それだけ、じゃ…ぃや…だ」  顔が火照っているせいか、目が潤んで見える。 「ここも触って欲しいのか?」  そう言うと、陰部へと手を伸ばした。  それに対して身体を震わせる。少し触られただけで、自分のあそこが濡れているのが分かった。 「……もう少しで、イキそうだな」 「ふ、ぅっ」  ゆっくりと脱がされる服。  少し擦られるだけで身体が跳ね上がりそうになり、コウにしがみ付いて耐える。 「…コウ、コウ……」  正面になるように向きを変えると、今度はルゥが相手の陰部へ手を伸ばした。  そして、手を当てると愛撫するように擦った。 「う――ッ」  コウは身体を震わせたが、姿にお構いなしに自分の身体を相手の(もも)にのっけると陰部を素股をするように擦りつけて来る。 (むずっとする……ッ) 「……変になっちゃう……。コウ、ちょう……だい……ッ」  目を潤ませて、今にも涙が零れそうな顔をコウへ向けて来る。  火照ったエロい顔が、気持ちをそそる。本当は、イかせるだけを考えた『荒療治』だったが、彼の方も限界だった。  魅了を纏っている上、美味しそうな顔をされ、誰がそんな状況に手を出さずにいられるだろうか……。 「悪いな……。俺が限界だわ」 「……ふぁ……っ!ああ…ぅ」  仰向けに引っくり返されたルゥは、コウのペニスを身体の中へと迎え入れる。 「ひゃん……ぃあ……コウ…ッ」  身体の奥へと押し込まれるような刺激に、声を洩らす。  ルゥの身体はまだ求めていた もっともっと―― そう自分の中で何かが語りかける。 「ふぁ……あ、ぁっ」  段々と自分の身体に起こった異変が、怖くなってきて涙があふれてきた。その涙を指で拭うように手を置いたコウは、そのまま口付けをしてやる。 「大丈夫だ。俺に身を任せちまえ」  いつもと違い真剣な表情を見ると、恐怖よりも相手への信頼がましてゆくのが身体に伝わってくる。 「ん――っ」 「良い子だ」  その後も自分の本能のまま、身体を動かす。  求める気持ちに応えてくれるようにコウの方も、相手への刺激を忘れなかった。 ****  目を覚ますと、体は重かった。  またいつものように気を失ってしまったようだ。今回は、いつもと違い激しかったのもあるが、その事を思い返して顔を赤らめてしまう。何であんな事をしかも、自分から進めて強請(ねだ)っていた気がする。 (いや、強請ってたよな、俺……!)  薄っすらとだが思い出してしまうと、恥ずかしさのあまりに穴があったら入って埋まってしまいたい気持ちだ。  恥じた気持ちを落ち着かせて辺りを見渡してみれば、此処は自分の部屋のようだった。服は着ている所からして、きっとコウが不器用ながらに着せてくれたのだろう。  しかも済んだ後の処理までしてくれている……それを考えると、せっかく落ち着いた気持ちが、また恥ずかしくなったきてしまいそうだ。 「……あれは、何だったんだろう」  自分の体に何があったのか、そんな事を考えていると廊下から声が響き渡ってきた。 「気絶させるまで容赦ない事したの?!」 「ち、ちげーよ!無理やりは、やってないって何度言えば――」  どうやら、ノエルが勘違いしているらしくコウが怒られてる。と、しても自分のパートナーに信用されてないコウって――  ドアが開くとノエルと目が合った。 「あ、いらっしゃ……」 「ルゥ~~」  思い切り抱きつかれた。 「コウさんは悪くないですよ。あの、ボクの方が……」  説明をしようとしたが、思い出すと言葉につまってしまう。  身体が火照って、いう事を利かなくなったことは覚えている。しかも、思っても見なかった言葉をコウに言った。それをノエルに教えるのは、恥ずかしい。  だけど、伝えないとコウへの疑いが解けないのも事実……少しずつ、時間をかけるように話していった。  ノエルは話を聞くと、何か思い当たる事があったようで二人に伝えた。 「もしかして何だけど、さ。“発情”したんじゃない?」  聞きなれない言葉に驚いた表情を見せるルゥ。 「やっぱりそうか……」 「うん。俺たち夢魔は、人間界へ行くと相手を見つけるんだけどさ。その時、相手をその気にさせる為に自分にみたいなのをかけるんだよね」  それで火照ったエロい身体に、人間の方も欲情する。  その話を細かく説明してくれるノエル。知らなかったとは言え、今のルゥは夢魔だ。あれがエンジンで発情だとしたなら納得せざるおえない。  肇への行為を引きずってしまっていたんだろう…… 「ご、ごめん、なさい……迷惑かけて」  情けなくて涙が出そうになる。そんなルゥの頭をコウは軽く撫でてくれる。 「荒療治だったが、効いたみたいで何よりだな」 「危うく、シフォンに殺されそうになったけどね」  意地悪そうにノエルに言われ、まあなと返す。   「こいつ、夢魔のくせにそんな事も知らなかったのか?」  そう言われてドキッとする。  だが持つべき者は友達と言うものか、ノエルがフォローしてくれた。 「しょうがないじゃん。夢魔のイロハを誰にも教わらないできたらしいし、シフォン様が今少しずつ教えてる最中だよ」  多分っと言いながらコウに説明してくれるのに対し、小さく何度も頷いた。 「でも、何かきっかけがないと発情なんてしない……ましてや此処は魔界だし、そんな事起こる訳が――」  そこまで言うと2人は気が付いたのか、顔を見合わせる。 「あいつ……何かしたって事か」 「そうなっちゃうね……俺達で、念を押しとかないと――」 「その必要はありませんよ」  二人が話し合っている所に声が飛び込んできた。  その主は、ちょうど顔出しにやって来たシフォンだった。 「昨日から念は押していたんですが……どうやら、ルゥの方がなってしまった…ようですね」  ルゥの側にやってきたシフォンはベッドに腰を下ろした。少しグッタリしてるルゥの前髪をかくし上げるように触ってくる。  その手付きは優しかった。どうやら、怒っている訳ではなさそうだ。 「じゃぁ、どうしてルゥは?」 「目を離した隙に、少しばかりありましてね。発情したのに気が付かなかったのは、私のミスです」  シフォンは溜息を付いた。 「それにしても、発情ってあんなにぶっ倒れるほどのものなのか?ルゥを見かけた時は大変だ――いたっ!!」  それを言い終わる前に、ルゥは自分の枕を思い切りコウめがけて投げつけた。もうそれ以上言うな、と言う目を向けながら。 「終わった事だから良いだろ!」 「ッ……ぐす」  そう言われてしまうと、言葉もない…投げるものもない(枕は投げ終わった)自分の恥ずかしさを晒されてる気持ちになってしまって、涙が出てくる。 「いっ!わ、悪かった……もう話さないから!」  そんな二人のやり取りを尻目にノエルがシフォンに言う。 「発情は、相手と寝る為の1つの手段だけど、何て言うか、仕事にやる気が出ない時の自分への“カツ”を入れる感じにもなるんだ。でも、そのスイッチが入っちゃうとヤルまで治らないんだけどね」  話を聞く限りだとまるで『媚薬』のようではないか、そんな状態に人間とする時はなっているのかと思うとゾッとしてしまうルゥ。  シフォンは、その事を理解して肇に近づかないように言っていたに違いないが、もし、まだコントロールもしらない夢魔が近づいたら、きっと干からびてしまう。誰とは言うまいが―― 「コウがその方法を知ってたとは、ね」  そう言いながらコウを笑顔で見るノエル。寒気を覚える 「な、何となくそうだと思ったんだよ! てか、今は拗ねているルゥを宥めてるんだからさ…そんな事まで言われると、俺はグレるぞ!?」  何だか少し可哀相になってくる。あの状態から助かったのはコウのお陰でもある訳で、そう思うと少しほっとけないルゥは、助け舟を出す事にした。 「コウさんのお陰なので……苛めないで下さい」  赤らめた顔を見たノエルは、その表情に免じて許すことにした。 「はぁ……ルゥがそう言うから今回は許すけど」  それを聞いて一安心するコウ  まさか夢魔がそんな体質だったなんて。ノエルやコウ、シフォンに会っても何とも思わなかったのに人間は別、向こうへ仕事へ行ってる夢魔はこの麻薬のような感覚で人間から生気を奪ってるのだろう。  何だかんだあったが、また自分の身をもって勉強するハメになってしまった。 「もう一度、言ってくる事にします。話を聞く人だと、良いのですけど」  そう言いながら、部屋を出て行った。  少し体が楽になってきたルゥは、ベットから身体を起こす。 「それじゃ俺達も、帰るね」 「……うん」  帰ってしまうのか。二人が帰るのが、何だか今日は心細い――そんな顔をしていたのか、大きな手がルゥの頭を思いきり撫でてくる。 「大丈夫だ……また来てやるよ。どうせ、ノエルは明日も来るだろうけど」 「……うん!」  それを聞いて、嬉しそうに返事を返すのだった。 「あいつ、笑うと可愛いな」  2人は今回の件をシフォンに任せたその帰り道、ふとノエルにそう言葉を漏らしたのはコウだった。 「何今更言ってるの……ルゥは凄い可愛いんだよ」 「いや、笑った顔は見た事あったんだけどな。あんな可愛い顔はあんまり見た事無かったというか」  それは怯えるように警戒しているように見ている。  それだけではなく一緒の時は、何か気を使われている気がして―― 「まぁ、あんな事したんだから、ビビられて当然だけどね」  それを言われてしまうと言葉もない。コウは初対面の時にルゥを襲った。  勿論、個人的な“エサ”としてだ。その後、謝りはしたが……何となく、いまだにビビられてる気がしてならない(※1話参照) 「……(まぁ、あの態度はそう言うのじゃないだろうけど――)」  ノエルはルゥを思い浮かべ、そんな事を考える。 「今日の感じからして、心を許してくれたんかな?」 「そうなんじゃない?それに、エロい時のコウはカッコイイしさ♪」  小悪魔的な表情でコウに言う 「なっ!いつもは格好悪いみたいじゃねーか!?」  怒るコウに、ノエルが近づいて襟の裾を軽く掴んで引っ張り寄せた。 「じゃぁ……試してみる?」  誘っている時のノエルはエロさ全快だ。  つい先ほどしてきたコウでさえ、やる気に火がついてしまう。その為、コウは人間界へ行かせたくなかった。この表情を別世界、ましてや『人間達』に見せる。そんなの耐えられるわけが無い。それだけノエルの事が好きなのだ。 (この表情は……俺だけの物(もん)だ…)  コウもノエルの顎に指を当てると鋭い瞳を光らせ、唇に口をもっていく。 「……ん」  チュッと音が出るソフトキス。  そして、少し火照った頬のノエルは、コウに言う。 「……ほら、エロい顔はやっぱりかっこ良くて、癖になる…」  真剣な眼差しがノエルの目に映る…。いつも振り回されている感じがある表情は、微塵も感じられないほどだ。ルゥも、それに気持ちを持っていかれたのだろう――。 「で……どうする?しちゃう?」  コウの首に両腕を回し、小首をかしげて見せる。 「……ここじゃしない」 「えー」 「帰ってからだ」  そんなに誰かに見られるのが嫌なのだろうか。  今歩いている場所なんて、まだ樹海の中だから見られる心配があるとすれば、ここら辺に居る野鳥くらいだろう。 「あーぁ……やる気削げちゃった。それじゃ、かーえろ!」  ふて腐れたノエルはコウを放置して、森の中を歩いていく。せっかくやる気になった気持ちが逸れてしまった…。だけど、帰ってからって言葉には期待していないでもない。 「うぉい!俺を置いてくなよ!!」  さっさと歩いて行ってしまうノエルを追うようにコウは、追いかけていくのだった。

ともだちにシェアしよう!