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第5話①※
ここは樹海 魔界の中で一番迷いやすい森と名高い場所。
朝は野鳥が飛び回り、夜は静かな梟の子守唄。
深い森の中に足を踏み入れると右も左も分からなくなるのは、道を知らない素人のみである。
そんなまだ明るい森の中を一人、ローブを纏いフードをかぶった女――いや、男が歩いていた。
「見つけたぞ!お前が噂の“魔法使い”だな」
叫び声を上げて茂みから現れたのは、魔族の男だった。
“はぐれ”であろうか――手には長方形の長い木材。それは男の真後ろから襲いかかってきた。
ローブの人物は、平然と横目で相手の気配だけを見る様に微動だにしない。
「見知らぬ人に呼び捨てされるとは、心外ですね」
「お前を気絶でもさせて、たっぷり味わってやるぜ!!」
汚い涎 を垂らす、はぐれ魔族は木材を思い切り振り下ろした。
ガゴンッ
鈍い音が響き渡る。だが、立っている男は無傷だった。
相手が持っていた武器は綺麗に割れて足元に転がる。その顔は青ざめており、予想もしていなかった。とそう言っているようにも見えた。
ローブの男はゆっくりと相手の傍へと歩み寄る。
「木って便利ですよね。折れ、突き刺さる上、切断する事も出来ます」
「ッ!!」
「そうだ。ここまで辿り着くのは、お疲れでしょう。私の家でお茶など如何ですか?」
フードの奥から覗く表情は、怖いくらい良い笑顔だ。
「く、来る……なッ」
はぐれ魔族は逃げるように後ずさるが、何かにつまづいた。
いつの間に出来たのか草の輪が足に絡み付いて、足を引っ掛けて転んだようだ。
「人の誘いを断るとは、感心しませんね」
転んだ相手にゆっくりと近づきながら話しかけると、パチンッと指を鳴らしてみせた。
「……まったく。私の魔力が美味しいなど、誰が言い出したのか」
とても不服そうな声を上げながらフードを外した男は、シフォンだった。
手には楕円の瓶(片手サイズ)それをローブの懐に仕舞いこむ。辺りは静かなものだった。さっきまで彼の事を狙っていた男も見当たらない。
「また、新しい用事が出来てしまいましたね」
そう言いながら、通ってきた道を引き返して行くのだった。
****
肇がやってきて数日が過ぎていた。
ルゥは家に一人。
体調の事もあるが、シフォンが出掛けている為、お留守番と言う所だろう。
この間の事で(※媚薬の件)彼に少し警戒していたルゥだったのだが、今の所は何も無い。本人に異常が起こる訳でもなく、『媚薬』のような体調変化が現れる心配も見えない。
あの後は、魔族のコウと何度もやったのもあり。2、3日ほど動けなくなっていた。だが、シフォンに叱られる事はなかった。
もしかしたらルゥの知らない所で、コウが代わりに倍の叱りを受けていたのかもしれない。肇にも心配されてしまうが、本当の事が言えないので言葉を濁して伝えていた。
何となくルゥと話すのに、ぎこちなく感じるのは気のせいだろうか。避けられている訳ではないと思いたいが、視線をそらされる時がある。
(まさか、見られたとか?)
何処かから見ていたのだろうか。 ルゥは記憶を呼び起こそうとしてみるも、あの時は飛んでしまっていた為、覚えてない。思い出すにも細かい部分をどう思い出せば良いのか分からなかった。
「……気にしすぎかな」
思い出せない考えを放棄して、今はずっと寝ていた事で鈍ってしまった身体と体力を戻さなくては――その為、掃除でもしようと考え直す。
台所の方から掃除でもしようか。そう思いながら歩いている時だった。
「ル~ゥ~」
「ひゃぃっ!?」
そこに丁度良く遊びに来たノエルに、後ろから抱きつかれた。
「ノエルさん。いつのまに……」
「玄関からだよ?声かけても反応がないから、入ってきちゃった♪」
そう言いながら辺りを見渡している。
「シフォン様は?」
「出かけてますよ。肇さんの事とかもあるから……」
「そうだったね。人間は早めに帰さないとだからなぁ」
話をしてる最中、ルゥの様子がおかしい
「……っ……ぁッ」
その声を聞くと嬉しそうに顔を近付けて来る。
「ルゥ、どうしたの?」
「や、離――」
いつのまに触っていたのか、尻尾を愛撫されると声を押し殺すルゥが、涙目になっていた。
シフォンが居ないと知ったノエルは、からかいたくなった様子。そのまま胸に手を当て乳房へと持っていき抓んでみせる。
「ルゥってば、ここも好きだよね」
「ちがっ……好きじゃない」
手をどけようとするものの、後ろから羽交い締めの様にされてると、上手く動かせない。力も相手の方が上だ。
「この前コウと、楽しくやってたんでしょ?」
「……ひっく…知らない……やっだ…」
触れてくる来る手、乳首に快楽を感じてしまうようになっていた自分を認められず。この前の乱れた姿を指摘されてしまうと、恥ずかしさでおかしくなりそうだ。
ルゥは自分の陰部、ペニスがムズッとして内股にさせた。
早く、この手を退かさないと、もっと恥ずかしい思いをする。そう感じてノエルの腕の中でもがいた。
「おねが……はな、し」
「だ~めっ」
「……っ!」
ノエルが抓んでる指を少し動かした時、刺激が身体の中を走った。
――ポタポタと滴り落ちる白い液。ルゥは力なく身体を落とすと息を荒く、泣き声を小さく洩らす。
「あ、イっちゃった?」
「……ひっ…く、ぐすっ」
溢れ出る涙を舌でひと舐めされ、耳に囁かれる。
「ルゥとしたいな?」
耳に当たる息にゾクッとしてしまう。相手にもの欲しそうな顔までされてしまっては、断るに断れない。どう言葉にして良いのか分からないルゥは、そっぽを向いてしまった。
「優しくするから、ね?」
ノエルの手がズボンの中に入ってくると、濡れて気持ち悪かったそれを下ろしてゆく。相手を拒む事も出来たのに、それをしなかったルゥ。
もしかしたら良くしてもらえるのを期待しているのかもしれない。
「ノ、エル」
まだ、ほんの数日だがシフォンとの身体の関係がないのが、もどかしく感じてしまっている自分がいる。前なら、ここに来た頃なら、そんな事すら思わなかった筈だ。
(やっぱり、ルゥは可愛い)
そんな事を思われてるとも知らないルゥは、目を強く瞑って相手の出かたをうかがっている。
「ノエル……。は、恥ずかしい」
「そう?また、感じてきたんじゃないのかなー?」
そう言いながら耳の裏に舌が当たる。またルゥは、小さい声をもらした。あの時は自分じゃない何かが支配していた為、恥ずかしい事も出来たが、今してみろと言われたら出来るか分からない。
だからこそ、ノエルにされる事が全てが恥ずかしくて、胸が締め付けられた。
相手が羽交い締めの状態で、さっきの白い液を手に付けると後孔へと滑り込ませてきた。ヌルッとした感覚がお尻の方へくると、ルゥは身体を近くの壁へと手をつき、力なくもたれる。
「……きもち、わるぃ」
嫌がるのもお構いなしに、そのまま首筋に口を持っていき吸い付いた。
業とらしく音を出しながらされるので、聞いているとエロい気持ちさせられる。
「ひぁ……ッぅ」
耐えられない。声すらも、相手を欲しそうに求め上げる。
「ねぇ……。シフォン様とは、どんな風にするの?」
「そ、それは……」
シフォンは、最初の頃の乱暴なのと打って変わり。今は、大切に抱き寄せてくれる事が多い。叱られた時のお仕置きは、恥ずかしいものだが、最近は――
思い出しながらルゥは、恥ずかしそうに相手の行動を拒む。
「やら……手、はなして……っ」
ノエルは、まるでシフォンを求めるような相手の姿に少し妬けてしまう。
「嫌だよ。今は、俺と楽しもうよ」
本当は、少しだけ可愛がるつもりだったが、あまりにもエロくて、そして美味しそうにしている魅了に、手を出さずにはいられなくなっていた。
そのままグッと指が蕾の中に押し入ってくると、ルゥの身体が痛そうに動く。
「ひっ……アッ…ああ…っ!」
「ルゥごめん。俺も、ガマン……できない、かも」
表情にガマンが利かなくなっていたノエルは、自分の下半身を少し辛そうに動かす。自分より小さな少年を向き合わせると、膝に乗せて接吻をした。
「んむぅ……ッ!!」
そのまま腰を下ろさせ、ゆっくりと確実に奥へと入れていった。
「やっぱり、慣れてきたね。あんまり解さなくても、入っちゃった」
「……あっ、もうっ!」
それだけで、イッてしまいそうだ――そう口にしようとした時、ルゥのペニスをノエルに押さえられた。
「やっ!やだ、ノエルっ……イキたいっ!?」
「今日は……一緒が良いんだ、俺…」
「……ぁあっ……んん!」
押さえつけられてイけない…辛いけど、変な気持ちがルゥを支配する。
そのまま口を接吻で塞がれ、おかしくなってしまいそうだ。
もし、昨日の自分だったら喜んで腰でも何でも強請っていたに違いない。だけど、今はそんな状態じゃないからこそ、恥ずかしくて、でも気持ちよくなる事が怖くて仕方がない。
「大丈夫。コウみたいに優しくするから」
ノエルも凄くエロい表情をしている。その表情を見ると、彼も夢魔なんだと言うのを思い出すルゥ。
そして、腰が押し上げられる感覚がくる度に声が抑えられない。
「あっ。やっ……ひゃぁっ!?」
「……っ!」
二人で一緒にイク……。その中、解放されたかのようなオーガズムを味わったルゥは、グッタリとノエルに寄りかかった。
「今回は……失神しなかったね」
「……」
顔が見れない。失神するのは自分の体力を超えてしまうからで、そうでなければめったにそこまではならない。それでも疲れには負けてしまうようで、ノエルに寄りかかったまま眠ってしまった。
「魅了が美味しいと、ついつい無理させちゃう。気をつけないと……」
そう言うとルゥを抱き上げて、その場所を移動する。
後片付け(ルゥの体も含めて)をしないと、シフォンに見つかったら怒られてしまうどころでは、ない。
体が軽いと感じるのは、エッチの相手が夢魔同士なのもあるに違いない。
力(エナジー)も満タンだ。最初は憎くも感じてた彼(ルゥ)に対し、今はそんな想いを感じはしない。
「さぁてと……。どう言い訳しようかな~」
証拠を隠す努力はするが、どうせシフォンの事だ。すぐバレてしまうのだろう。そう思いながら、ルゥの部屋へと足早に運んでいくのだった。
「……」
その通り過ぎてゆく姿を見ていたのは、肇。
最初はルゥを探して歩いていた。理由はだいぶ前の接吻寸前までいった時の事を謝ろうと思っていたからだ。
ふと、ある夜のシフォンと会話を思い返してみる。
『ルゥとお話をするのは良いでしょう。ですが、それ以上の行動はとらないように』
『そんなつもりは、ないんだけど…』
次に言われた言葉は、ルゥが倒れたのは肇も関係があると言うものだった。
意味は間違ってないが少しとばっちりな気もしないでもない。どう接すれば良いか分からなかった肇は、ぎこちない態度になってしまっていた。
彼の態度に不安を覚えたルゥを思い、先に謝る事を考えたのだが、相手を探している最中、聞き慣れない『音』を耳にした。音が聞こえる方へ歩けば歩くほど、大きくなっていく。
そして、彼は見てしまった――。
「……夢魔、か」
肇は、彼等は愛らしくても『夢魔』なのだという言葉の意味を思い出す。
何だか、見てはいけない気持ちになって隠れてしまったが、居た堪れない気持ちだ。
「謝りそびれたな……」
そう思いながらも、気が付かれないうちに居間へ移動しようと動き出す。
だが、唐突に目眩を感じて立ち止まった。
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