19 / 28
第5話③※
下町の端へ行く途中にある店。そこにシフォンは顔を出していた。
ここは、もう馴染みのマダラが経営している所である。
下町の奥や人気 の無い場所を想像するだろうが、この店は逆に人目を利用した灯台下暗しになっていた。
本当は帰る途中のシフォンだったが、ここに来る用事が出来てしまった為、不本意だが此処にいる。
「おおっと。姉さんってば、またまた新しい子なんて~♪」
「……その台詞は、迷惑な時に言うものです」
楕円瓶の中を品定めするように見ているマダラに呆れたように言う。
この間もルゥが持ってきて、今日もまた新しいのを持ってこられたらマダラの懐は暖まってしまう。
「そう言えば、ルゥはその後どうなんすか?この間、様子が変だったんですよ。もしかして――」
「ええ、あなたの考えてる通りです」
誰がどう見ても様子が可笑しかった。顔を真っ赤にして肩を上下し、まるで熱が出た様な状況。本人は、気が付いてなかったようだけども……。
マダラは瓶をカウンターに置くと、嬉しそうに尋ねてきた。
「その後はお楽しみで?いやぁ、あの魅了ですし、凄く美味しいに違いないっすよね。羨ましいっすね」
「……残念ですが私はしてないです。あの時は家に居なかったので」
あのままルゥは放置されていたら意識が朦朧として、大変な事になっていたに違いない。シフォンにとっては、少し残念でならない事態ではあるが、彼にとって、コウに出会えたのは幸運と言って良いだろう。
(姉さん哀れだなぁ)
またシフォンの目の届かない所で何かあった場合、少し考えなければならない。ルゥは誰のモノか、それを体に染み付けてやらねば
なんだか心の奥でチリチリしたものを感じるシフォン。それが何なのか本人は分かっていた。
(まぁ、そうならなければ良い話ですが……)
「そう言えば、ここらで“歪み”を見ませんでしたか?」
「それって、あの空間の穴みたいのですかい?一時期、大きなのがあった様ですが、とっくに魔王 様が塞いじまいましたよ」
思い出すかのようにシフォンに説明をする。これでは、肇が何処から落ちたのか分からないままだ。本格的にへ相談するしかないかもしれない。
(早めに人間界ヘ戻さなくては――)
そう思考錯誤しているシフォンに話しかける、空気を読まない男マダラ。
「ところで姉さん。こんなのあるんだけど♪」
嬉しそうに持ってきたモノにシフォンは怪訝な顔をする。
「……貴方は、空気を読みませんね」
「まぁまぁ、そう言わずに持っててくださいよ、普段のお礼も兼ねてるんですから♪」
何だかとても楽しそうだ。そんな態度に怒る気持ち失せたのだろう、小さな溜息を付いていた。
持ってきたものは、魔界では見た事ないものばかり。と言う事は――
「また持ってきたのですか?」
「ええ、あっち側は不思議なモノがいっぱいですからね、いやぁ私としても興味津々ですわ~。使って良かったのがあったら、教えて頂けたら有り難いですけど」
ここまで言うと、マダラも後へ引かない奴だ。仕方なく、渡されたモノを持って帰ること事にする。
「マダラ。今日渡したのは、“調教”でもした方が魅力あると思いますよ」
「お!本当ですかい?助言どうも♪」
それだけ会話をすると、シフォンは出入り口のドアを開けて店を後にする。
チリン……リン…
「さて、と」
瓶の蓋を開けると、煙が逃げ出すように広がった。
そして、手に持っていた物は消えてしまう。まるで、元から無かったかのように―― 現れたのは、ルゥよりは大きい少年。
歳はだいたい12ほどだろうか。少し違うとすれば首輪が付いているのと素肌にローブ一枚羽織ってる事。姿は魔族の少年だ。
気が付いて立ち上がった子は、逃げようと扉へ走り出した。
マダラは止めに行く素振りも見せず、その場で相手を楽しそうに見据える。
「あやや、これまた元気な“お子さん”で」
何故、捕まえに行かないのか、それはすぐに分かった。
扉のノブに手を掛けた瞬間、何かに阻止されるように膝を付いてしまった。
「…ぐっ……ガ、ケホッ」
とても苦しそうに首輪に手を当てている。
マダラはそうなる事が分かっていた様で、ゆっくりと少年の元へ歩み寄ると、顔を覗きこんだ。
「君も運が悪かったね。あの人にちょっかい出したんだろうけど――」
「……」
そして、自分の首をチョイっと指しながら説明する。
「その首輪。シフォン様のプ・レ・ゼ・ン・ト。だよ♪ それが付いている間は俺様の空間からは絶対出られない」
「……!」
「うんうん、良い表情だ。これなら、いい商品になってくれそうだ」
相手の顎に手を置くと、舐める様に上から下へと見つめる。
「せいぜい楽しもうじゃないか。ボクちゃん」
据わった目を相手へ向けるマダラ。それに少年は、恐怖に落とされた顔をすると、悲痛な叫びを放った。
だが、男はお構いなしに店の奥深くへと連れていってしまう。これから始まるは、彼の“仕事”。表向きより本人が楽しむ裏稼業だ。
シフォンが店の外へ出た時、見覚えのある顔と遭遇する。
「おや、コウではありませんか。ノエルは、ご一緒じゃないのですか?」
そう言われてコウも反応する。
「俺も探してるんだ。下町にはいないからな、きっと魔法使いさんの家だと思うぜ?」
嫌な予感がしてならない。あの出来事から2,3日は経っている。
そろそろ、またノエルの餌食になってしまうかもしれない。そう考えて早足で帰ろうとした時、誰かが話しかけてきた。
「いたいた!コウ、シフォン様!」
それは、ノエルだった。さっき心配していた相手が目の前にいる。ルゥに何かがあったのだろうか、不思議そうにシフォンは質問した。
「どうかしたんですか?」
「それが肇が倒れちゃってさ」
「倒れた、ですか……ふむ」
驚いた素振りは見当たらない。
それはシフォンの中での想定の範囲内だったのだろう。ここは魔界、人間が住める様な環境になっている訳がない。空気も全て、人間界や天界と違うのだ。
だが、気になる事が1つある。瘴気に当たったとしても、倒れるのが早すぎる。もしかしたら肇は、『忠告』をまた無視したのかもしれない。
(……これは、肇の様子を見た後。ルシファーへ連絡を入れねば)
三人は、シフォンの家へと急ぐ
「やっぱり、魔瘴に当たったからかなですか?」
「ええ、そうでしょうね…。とにかく戻りましょう」
****
気持ちの切り替えが出来ない。
さっきはやろうと固く決めたのに、心が揺らぎそうだ。
だけど、もう肇が横たわっている横で、正座で座っていたルゥ。
「ああ、もう!!」
何も出来ないのを待つんじゃなくて、何かをするって決めたばかりだろ。
そう自分の心に言い聞かせ、動けないマグロ状態の肇に何をすれば良いのかを考えてみる。
(……シフォンだったら)
何をされるのが嬉しいだろう。思い出して考えてみるが、頭の中が真っ赤になってしまい、思考が定まらない。
これはもう、人間界へ仕事へ行っている夢魔達に手ほどきというモノをして欲しいくらいだ。
取り敢えず顔を覗き込む、そして相手の口元に口を近付けて接吻を試みた。
最初は相手の唇を軽く噛むようにソフトキス。固く閉ざされてないのを確認すると、そのままディープにまで持って行ってみる。
自分は重いのではないかと申し訳ない気持ちになりつつも、相手の身体の上へ乗る。首筋にキスを落として、甘噛みをする。
――ッピク
少しだが軽く体が反応した。相手も感じてくれているようだ。
寝ている相手に何をしているのか……自分のしている事に恥ずかしさを感じてくるが、それに対して快楽すらも感じている自分がいた。
(……これが、ニンゲンの香り……)
癖になりそうな、神秘的な匂いに頭がクラクラしてくる。
擦り寄る様に首筋から耳へ、今度は胸元へと舌を動かしていると、だんだんと相手も声を上げてくる。キスに合わせて少しずつ乗せている体が、下へ下へとずれて行くと何かが自分のお尻に当たるのを感じた、
「!!」
肇の性器が当たる感触。
ルゥも何が当たったのか分かると段々と頬を染めてゆく、その表情はとても欲しそうな顔をしていて、彼にとって完全にスイッチが入った証拠だった。
そう『発情』と言うスイッチ。
陰部をゆっくり触り始めると、ユックリとズボンのチャックを下ろしてみる。
すると、完全じゃないが大きくなっているソレとご対面。
自分の口に入れられない棒を舌で愛撫すれば、筋を舐め、そして鈴口を責め始める。
ルゥは、恥ずかしいと言うより、よがりたい気持ちでいっぱいになっていた。
『入れたい』 そう感じるのはやはり夢魔としての本能のせいだろうか…… 動かない相手のペニスを解された自分の中に入れてゆく――
「…ぁ……ん」
自分の腕の裾を噛んで声を抑えようと勤める。
いつもなら「抱かれている」気持ちでいられたが、今日は自分からしないといけないという恥ずかしさが、発情していても拭えなかった。
相手にまたがった騎乗位の姿勢、足と腰が痺れる。
(……動かないと)
動かなくては自分だけじゃなくて、肇も苦しい。
慣れない姿勢で腰を持ち上げると、抜けてゆく感覚が何とも言えない。
「――ッひぅ」
身体にやってくる快楽。
せっかく声が出ないように塞いでいた裾が口から離れて声が漏られた。
「うっ……」
気絶から少しだけ意識が戻った肇、自分の上にのる人物を見た。
女の子のように華奢の金髪の少年が目に映る。
(……これは、夢かな…)
まだ意識がハッキリしていない。自分のおかれている状況が夢の中に思えてくる青年は、一生懸命に涙と声を堪えながら自分の上で頑張る少年に愛おしいものを感じた。
(……辛そう、だな)
動いてあげよう――それは、彼の優しさだった。
自分からやろうとしている、たどたどしい少年の動きに合わせ自分の腰を少し動かしてあげる。すると相手も目を見開いたような表情をして、声を漏らした。
「あっ……やぁッ!」
見た目通り、声も可愛らしい。頑張って騎乗位を維持する姿がいじらしい。
(これが夢なら、好きにして良いよな……)
もの欲しそうに涙を流す少年の気持ちに応えるように腰に手を添えて、奥へ押し込む―― 押し込まれた苦しさと身体にくる痺れに、ルゥは身体を震わせた。
「――あっ、あ、ひゃぅ…ッ」
グッタリした表情を見せながらも、肇の気持ちに応えてくれるように身体を震わせる少年に対し、腰の動きが止まらない。
「アァッ……も……イッちゃ……!」
涙を流しながら乞うように言う少年に肇も応える。
「……良いよ、おいで。ルゥ……」
「ふぁ……おく…ッ」
優しく撫でてくれる大きな手に顔を摺り寄せながら、暖かい精液を受け止め、ルゥも絶頂した。
ルゥはやっと気持ちが落ち着いた時、自分がした事を後悔していた。
まだ朦朧としていた肇はそのまま、また夢の中。 もう少ししたら、元気になる――と、思いたい。
(……これで、大丈夫なのかな)
不安はありつつも、少しは役に立てたかもしれない気持ちはある。
さて、ノエル達が帰ってくるかもしれない。それまでにこの状況をどうにかしないとならない。勝手な事がばれたら、怒られるだけで済むのだろうか。
いや、絶対済まない。とりあえず最初に相手の身だしなみを整えて、ルゥもベットから移動しようと身体を起こそうとした。が――
「う、そ…」
腰が立たない。それだけではない、玄関の方から音が聞こえてきた。
もし動けたとしても鉢合わせ、この状況がバレてしまう。
焦ったルゥは、部屋の入り口の反対側のベットの裏へ隠れようと身体を動かす。
「ルゥ~肇の状態は……あれ?」
最初に顔出したのは、シフォン達を場所まで誘導する為に先頭を歩いていたノエルだった。だけど、そこには肇しかいない。
「ルゥ?」
「いないのか?」
そんな二人の会話を気にも留めず肇へ近づくのはシフォン。
相手の容態を調べる為に検診をし始める。だが、息も規則正しく上下しているうえ、特に異常は見られない。
(倒れたと聞いた筈ですが、妙ですね)
体の中の毒素が出ていったとしか思えない。
そんな事が普通の人間に出来るわけが無いと言う事は、考えられるのは1つしか残らなかった。
「ルゥ。今から2秒数えますから、すぐに出て来なさい」
据わった声は、怒っている証拠。
さっきまで話していたノエルとコウも黙ってしまった。
「……1……」
空気が重い。出て行かないと、もっと酷い事をされそうだ。
でも、こんな姿をノエル達に見せるのも嫌なもの。
「……2……」
「!」
ゆっくりとベットの反対側から、顔を覗かせてシフォンへ叱られた子犬のような目を向ける。
「……やはりルゥ、あなたでしたか」
「……はぃ」
「説教は後にしましょう。先に状況を説明してくれますね?」
だけど腰が立たない。
その動かない姿勢を見てシフォンは溜息を付き、コウに連れてくるよう指示をだす。
そいて、肇を部屋に残し、4人は居間の方へと移動するのだった。
ともだちにシェアしよう!