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何処に消えたというのか!?
母親思いの護矢比古が何も言わずに消えるとは考えにくい。
「それで…?」
「………?」
「そ…、そのお母さんは…どうなるの…?」
バクバクする心臓を押さえながら、香久良は問う。
「このまま息子が見つからなければ、ここに連れて来ようかという話になっているけれど…。
香久良はそれで構わないか?」
「ええ。わたしは大丈夫。
間に合わせじゃなくて、今の体調に合わせて薬草を煎じることができるもの。
様子を見るよりも、早くここに連れてきてあげられないの?」
体調が優れない人を放ってはおけない。
それは香久良の本心だ。
約束を交わした護矢比古の母となれば、なおさら…。
「香久良がいいなら、直ぐにでも手配するが」
「心細いままじゃよくないわ。直ぐに診ないと」
「そうか。なら、迎えを出すよ」
「お願い」
寝起きする部屋を手配しながら、香久良は頬に手を当てる。
『わたし…、いま、どんな顔をしてるかしら…。
護矢比古とのこととか、知られていないわよね…?
変に思われなかったわよね…?』
姿を消した護矢比古。
なにかがあったのだろうか。
香久良に一言もなく消えるとは考えにくい。
母親も事情を知っているかどうかは分からないが、体調を崩しているなら寄り添っていなければ。
動揺は隠せないが、迎え入れる準備に勤しむことにした。
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