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「ここに来て最初に飲んだ薬湯は、喉も胸の痛みも和らいで体の中がじんわり温かくなったわ……。
昼は薬草園で手入れをしているから、別の人が煎じてて味が違った。
寝る前のものは、私の目の前で香久良ちゃんが作ってくれて…護矢比古が貰ってくる薬湯と同じ味だった」
「………っ」
「苦くなりすぎないように、グラグラと煮立てたりしない。
疲れた心がほっこりするような、やさしい味…」
「………っ」
穏やかな笑みを向けて貰えて、香久良は胸がいっぱいになる。
たまに訪れる母に抱く気持ちとは違う形でくすぐったくて、顔が一気に熱くなる。
護矢比古の母というだけでも特別なのに、薬草を作っていることに気づいてもらえて。
それから、胸がぎゅうぎゅうと軋む。
「………っ、…………っ」
なぜだろう。
視界が滲んで仕方ない。
「あら…っ、あらあら…香久良ちゃん…?」
「………っ、う…、うれしい……。
里の誰も……、絶対に…気付かなかったのに…」
「ぶっきらぼうなところがあるけど、香久良ちゃんの心は温かな気持ちとやさしい気持ちで溢れてる。
それは、薬湯の味にも出ているのよ。
分かる人には分かるわ」
「っ、ふえ……」
心細いであろう護矢比古の母に寄り添っていたつもりが、心の底にある寂しさに寄り添われていた…。
少しずつ、護矢比古の母の体調は上向いてきて、香久良は安堵していた。
そんなある日…。
「久しぶり、香久良」
「夜刀比古………」
夜刀比古が訪ねてきた。
ここから事態は暗転していくことになる…。
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