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「護矢比古!
なんでっ、なんでそんなところに…!」
「……ぐ…っ、かは…っ」
眉間には深い皺が入り、歯を食い縛って苦しげだ。
「護…矢…比古…、なんで…っ?」
ゼイゼイと肩で息をする体から立ち上るのは、黒い瘴気…。
立ち上ぼり、渦を巻く黒い煙のようなそれ。
気配の似ているものをどこで見たのだろうか…。
遠い過去ではなく、最近の…。
「………?…………っ!?
どう…して…?どうして里の中に漂うものと同じなの…っ!?
ちょっ、ちょっと待って!
ああもうっ、何で閉じ込められてるのよ!」
ガシガシと格子を揺すぶるが、頑丈でびくともしない。
「香久…良…」
「無理して喋らないで!
今、出してあげるから!」
「俺の……こ…は…い……や…にげ…」
「喋らないでっ、待ってて!」
薄暗がりの状況では、どこが扉なのかが分からない。
あちこちを揺すぶって特定しようとするが、護矢比古は苦しげな表情を浮かべながら首を振る。
「いいか…ら、……っかは…っ」
「護矢比古!」
何故行方不明だった護矢比古がこの奥の牢に閉じ込められてるかは知らない。
里に漂う悪いまじないと同じものが彼の体から立ち上っている理由もわからない。
ここから助け出して悪いものを抜き取らなければ!
それしか今の香久良の頭にはなかった。
「待っていて!ここから出してあげる!
誰がこんな…!
あなたはこんなものと縁のないひとの筈よ!
ああもうっ!誰よこんな頑丈な…!」
ガシガシと揺らし、ゲシゲシと蹴り、香久良は格子が緩まないかと必死だ。
「ダメだよ、そんなことをしては」
「………っ!?」
ギクリとして振り返る。
後ろに立っていたのは、夜刀比古であった。
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