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頑丈な扉の近くまで来た。
そこで、漸く夜刀比古が口を開く。
「あの呪いは、海の向こうから渡ってきた性質の悪いもの。
簡単には解けないんだ。分かるよね」
「え…、ええ…」
ドクドクと、まだ血脈が逆流しているような気がする。
自分には何もできないのか。
何か事態が好転するように出来ないのか。
どうすればいい?
護矢比古の母親に知られる前に、どうにか無かったことに出来ればいいのに…!
「……ら…」
どうしよう。
どうしたらいいのだろう…。
「香久良、聞いてる?」
「………っ!?、あっ、え……?」
「……………ちゃんと聞いてくれなきゃ困るな」
「ご、ごめんなさい…」
悄々と項垂れる香久良の髪に、夜刀比古がそうっと触れる。
「もう一度説明するよ。
彼の中に入り込んだ呪いは、直ぐに解くことは難しい。
少しずつ削っていくことになる」
「………」
「混乱している里を落ち着かせていかなきゃいけないし、一気には解いてあげられない。
分かるね?」
「ええ…」
「頻繁にここへ出入りすれば、護矢比古の母親のことがうちの親にバレてしまうかもしれない。
大事にしてしまうことは、俺も避けたいと思ってる」
「…………」
「面倒ごとを起こさないようにするには、香久良がしっかりしてなきゃいけないんだよ」
「え、ええ…。
わたしはどうすればいいの…?」
「そうだね、まずは…」
護矢比古を助けたい一心の香久良には気付きようがなかった。
夜刀比古の本当の思惑など…。
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