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目の前で繰り広げられる出来事は、遠い遠い過去のこと。
輪廻の輪の中で香久良が落とした痕跡を拾いながら、忸怩たる思いを守弥は抱いているのだろう。
童子の目を通して宮司は事態を把握していた。
「これからが…最も見られたくない部分ですね」
宮司にとっても、…かつて香久良であった咲良にとっても。
見られてしまうのは嫌だ。
過去の罪を知られてしまうのは…。
いま、この事態を把握して心を痛めているのだろう。
咲良の魂魄の気配だけは分かる。
『完全に力を使い果たしているのか、それとも、気まずくて敢えて陰形しているのかは分かりませんが、香久良との繋がりの深い状態を早く解いてあげなければ…』
遠い過去に囚われていていい筈がない。
ずっと呪いを解くためだけに命も魄も削ってきた咲良を、いい加減解放してやらねば…。
『自らの罪だと思っているかも知れませんが、それは違います。
全ては、弱い心を認められなかった過去の私…夜刀比古が起こしたもの。
背負うべきは私なのですよ、咲良さん』
つらいと思う。
………とても。
香久良の嘆きは、それほどに深い。
だが。
縺れた糸はほどかねばならない。
『あともう少し…堪えてくださいね………』
懐に忍ばせた苻に手を重ね、宮司は深く息をつく。
『守弥さん』
「………?」
不意に呼ばれて、守弥は目をしばたたいた。
『ここから先は、私もですが咲良さんにとって最も見られたくない部分になると思います』
「………」
『過去のあなたである護矢比古を手酷く裏切ったと思い込んでしまっていますからね…』
「香久良も咲良も悪くない。
俺が出来ることをするまでだ」
零れた痕跡を拾いながら香久良の辿った道を追うにつれ、護矢比古が抱えていた想いにも気づいて、守弥は覚悟を決めている。
「何が起こったとしても、俺の心は揺るがない。
咲良を取り戻す。それだけだ」と。
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