470 / 668

自分の出来ることをする。 香久良は直ぐに行動に移した。 護矢比古に負担がかかりにくいものを特定し、自分で呪いを引き抜く事ができないかも調べてみる。 もやもやした黒い瘴気は一気に引き抜けないが、少しずつ削り取れることは分かった。 呪いを無くすには、血の繋がりで手にした力で行う方法と、想いの強さで引く方法があるようだ。 前者は夜刀比古。 後者は香久良になる。 『たしか…、母さんと夜刀比古のお母さんは親戚筋にあたるって聞いたわ。 夜刀比古のように強い力はわたしには無いけれど、想いの強さならば、出来るかもしれないわ…』 新月の日に訪れる母に聞けば、大体のことは分かる筈。 だが、なぜ今になって呪い解除のことを聞くのかと怪しまれては元も子もない。 何でも簡単に話すようには見えないが、万が一、事が露見してしまえば…。 『なんとか、知られる前にどうにかしないと…!』 呪いに侵食された人間は処刑されるのが里の掟…。 他の者に知られる訳にはいかない。 ………決して。 『あのお母さんを悲しませるなんて、絶対にダメ…。 ましてや、抜けきれずに処刑なんてことになったら…』 護矢比古の母親だから、悲しませる分けにはいかない。 『………それだけじゃないわ』 気づいてくれた。 薬草を育てて煎じていたのは、香久良だと気づいてくれた。 たった一人のひと。 実の母親のように慕い、実の娘のように可愛がって貰えた。 だから、悲しませたくないのだ。

ともだちにシェアしよう!