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『わたしに出来る最大限のことをする』 そう心に決めて、護矢比古から呪いを削り取る方策を練る。 朝晩の汁椀に煮詰めた薬湯を混ぜ。 想いを凝縮させて、悪いまじないを引きずり出す。 最初は全く反応が無かったが、日を追うにつれて黒い瘴気が細い縄のような形になってにじり寄って来るようになってきた。 『命の繋がりが遠いから仕方ない。 でも、出来ないわけじゃない。 諦めなければ…!』 引きずり出した呪いは、魔よけにも使われる薬草で包んで密かに焼いた。 残った灰も、丁寧に処理して始末する。 毎日、毎日繰り返し。 『あと、どれくらい…? でも、わたしが頑張らないと!』 社の大人の目を盗み、香久良は奥の牢に通って呪いを抜く。 日々の積み重ねで、少しずつ薄くなってきた。 「凄いな…。 香久良の想いの強さは…」 仕事の合間にやってきた夜刀比古も、瘴気が薄くなってきていることに驚くほどに。 「わたしに出来ることをしているだけよ」 「そう…だね……。 だけど、根を詰めすぎるのも良くないよ。 俺も出来ることをするから、香久良は無茶をしないようにしなきゃね」 「え、…ええ…」 夜刀比古もかなり呪いを薄めてくれて、香久良はほっとする。 「少しは気持ちを楽にしたらいいよ。 一人でやろうとは思わなくていいからさ」 「ありがとう」 随分瘴気は薄くなってきたが、護矢比古の意識はあまり戻ってはいない。 口は動くが、声が出ない。 気になるところは色々あるが、薬草の仕分けもある。 香久良は奥向きの部屋に戻る事にした。

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