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◆◇◆◇◆
数日後。
「なん…で…?」
一度は薄まった筈の呪い。
なのに、瘴気がどんどん濃くなっている。
「どうして…?
薄くなってた筈よ…!?
あなたも手伝ってくれて、薄くなってきてたわよね、夜刀比古」
「ああ。
随分薄くなってた筈なんだ。
何でこんな…」
「………どうしよう…」
香久良は床にへたり込む。
「海を渡ってきた質の悪い呪いだ。
すんなりはいかないんだよ?」
「でも…っ!
このまま護矢比古の呪いが抜けなければ、……どうなってしまうの!?
お母さんに知られたら…っ」
気落ちして体調を崩した母親が、息子の危機を知ってしまえば正気ではいられないだろう。
気取られてしまう前にどうにかしてやりたかったのに。
「どうしよう…っ、どうしたらいいの…!」
「少し、外の空気を吸った方がいいよ、香久良」
「うう…」
ホロホロと涙を溢す香久良を、夜刀比古が気遣いながら立ち上がらせた。
その一部始終を呪いに苛まされながら見なければならない護矢比古は、ギリギリと歯を食い縛る。
『気づいてくれ、香久良!
呪いの元は、夜刀比古が…!
騙されるな!気づいてくれ!早く母さんと逃げてくれ…っ!』
声封じがなければ、今すぐにでも伝えられるのに。
忸怩たる思いを抱えたまま、護矢比古の意識は深いところへ沈んでいった。
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