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「どうして…」
どれだけ薬湯を使っても、瘴気をいくら引きずり出しても、一向に薄まる気配がない。
「むしろ…」
護矢比古から噴き出す瘴気は、日に日に濃くなっていく…。
「どうしよう…どうしよう…っ」
濃い。
瘴気はあまりにも濃すぎる。
これでは、普段何も感じない人間にも瘴気が見えてもおかしくない。
「どうしよう…っ、どうしたら…」
無事に呪いを抜いて、あの母親と里の外へ逃がしてやると決めたのに。
このままでは存在がバレて処刑されてしまう…!
「どうしよう…っ、どうしたらいいの…」
「……っ、……ら…」
「………っ!?」
「…っ、かぐ……、にげ……っ、ぐっう…っ」
「護矢…!護矢比古!!」
「……いま…す…、……っ、がはぁっ!」
意識がある時に、護矢比古は逃げろと言う。
「逃げろなんて…出来るわけがないでしょう…っ!」
香久良はガシガシと格子を揺すぶる。
ここにいるから呪いが抜けないのだ。
きっとここから出れば、呪いなんて関係なくなる。
「こんなの…っ、こんなのがあるから…っ!」
「やめろ…、いいから…逃げ…、がはっ!」
「護矢比古!?……っ」
「香久良…っ?」
格子から手を離した瞬間、香久良が床に崩れ落ちた。
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