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「ダメだよ、無茶をしては」 「「………っ!」」 いつの間に来ていたのか、夜刀比古が傍にいた。 「香久良。 具合が悪いんなら、少し休まないとね。 部屋で少し寝ておいで」 「でも…」 「俺が引き継ぐよ。 少し休まなきゃ」 「………香…ッ、ぐ…!」 「護矢比古!?」 夜刀比古が視線を向けただけで護矢比古の声が封じられた。 「大丈夫、俺に任せて。 香久良は根を詰めすぎてるんだよ」 「………」 「ね?」 「…………うん…」 ふらつきながら香久良が奥牢から出ていく。 『香久良…!』 里の外へ出てからと思わずに、もっと早く伝えていればよかった。 家族はどうして成り立つのか。 想い合う者同士がどうやって家族を形成するのか。 ………子供をどうして授かるのか…。 伝えておけば良かった。 もっと早くに、里から逃げておけば…! 「漸く気づいたんだ? ああ。声を封じてたね、しゃべっていいよ」 「…………っ、お前…っ、香久良に何をした!!」 「…ちょっとだけ、一服盛っただけさ」 「………っ」 「疲れが取れるからって薬湯を飲ませた。 それだけのこと」 「…………っ!」 胃の辺りが熱くなる。 護矢比古が恐れていたことは、とうに起こっていたのだ…。

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