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処刑された者の遺骸は、里の辻に…。 香久良もそうならないとは限らないと匂わされ、クラリと目眩がした。 「たしかに、あの子の気性は優しい。 人に害を成したりはしない。 でも。香久良さんは里を出ることは許されない」 「どうして…」 「里に有益だからですよ。 どんな薬草も上手に育て、体調を崩した者に合わせて薬草を調合する。 薬になるものだけではないんです。 染めた糸の色がとても綺麗でしてね、交易品の中でも…とても人気があるのです。 もうすでに…手放せない、……手放してはいけない存在になってしまっているのです」 「………っ!たった…、たった15歳の女の子なのに…!」 たった15歳なのに、幾重にもがんじがらめにされた香久良。 「自由にもしてやらず、一生を…ここで過ごさせると…言うのですか…?」 「そうです。 生きるには、この社にいるしかない。 誰にも知られず、ひそかに」 「子供は…?どう…なるの…」 「察してください…」 「………っ!」 閉じ込め、外を教えず。 情報を遮断して。 今度は子供を奪うと言うのか…。 「姉娘が産むであろう子供と利害がかぶります。 香久良さんにも、このことは知らせる訳にいかない」 「………私が、林の向こうの家に戻れば…、引き取れなくはないでしょう?」 「人の口に戸は立てられない。 いずれは露見して奪われ、罪人同様…辻に…」 「………っ!」 なんて冷たい掟ばかりの里なのだろう…。 ほろ、と涙が零れた。

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