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夜が明けて、朝食を摂り終えたころ…。
牢の外では活動が始まるような時間帯になった。
『………おかしい…、静か過ぎる』
いつもなら、もっと人の声がするはずだ。
夜刀比古の企みに気づいたことを気取られぬよう、護矢比古は心を落ち着ける。
隣の牢に囚われている香久良の姉を、出来れば親元に返してやりたい。
ただ、何がどう降りかかってきたとしても、第一に守るべきは香久良だ。
それだけは変わらない。
『どうにか、母さんと合流して里の外へ逃がしてやらないと…』
迂闊に暴れて事態を悪化させてはならない。
人の気配を探りながら、護矢比古はじっと待った。
ゴト。
『………』
ひた、ひた、ひた。
「いた。
林の向こうの……。
それから、隣の…」
「娘っこの方を先に出せっていってたな」
数人の男が香久良の姉を運び出す。
「気を付けろ、寝入っている内に外に出せ」
「おう」
今度は護矢比古だ。
『焦るな。
完全に外へ出されるまで待つんだ』
扉が開き、引きずり出される間も、意識のない振りをし続けた。
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