491 / 668

夜が明けて、朝食を摂り終えたころ…。 牢の外では活動が始まるような時間帯になった。 『………おかしい…、静か過ぎる』 いつもなら、もっと人の声がするはずだ。 夜刀比古の企みに気づいたことを気取られぬよう、護矢比古は心を落ち着ける。 隣の牢に囚われている香久良の姉を、出来れば親元に返してやりたい。 ただ、何がどう降りかかってきたとしても、第一に守るべきは香久良だ。 それだけは変わらない。 『どうにか、母さんと合流して里の外へ逃がしてやらないと…』 迂闊に暴れて事態を悪化させてはならない。 人の気配を探りながら、護矢比古はじっと待った。 ゴト。 『………』 ひた、ひた、ひた。 「いた。 林の向こうの……。 それから、隣の…」 「娘っこの方を先に出せっていってたな」 数人の男が香久良の姉を運び出す。 「気を付けろ、寝入っている内に外に出せ」 「おう」 今度は護矢比古だ。 『焦るな。 完全に外へ出されるまで待つんだ』 扉が開き、引きずり出される間も、意識のない振りをし続けた。

ともだちにシェアしよう!