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『確カニ我ハアノ男ガ作リ出シタ物。 小サナ虫カラ始マリ、獣ヤ毒虫、蛇ガ食ライ合ッテ形成サレテイル。 アノ男ガ抱エタ憎シミト闇ヲ掛ケ合ワセテナ。 ダガ、完全ニ支配サレテイル訳デハナイ。 切ッ掛ケガアレバ、此ノ程度ノ軛ナド簡単ニハズレル』 『………』 『少シハ暴レテモ良カロウ?』 ケラケラと甲高い笑い声が頭の中に響く。 ダメだ。 今、口車に乗っては。 完全に外に出るまでは、事を起こしてはいけない…。 『我ナラ助ケテヤレルゾ』 『………』 『少ナクトモ、オ前ノ母親ト香久良クライナラ助ケテヤレル。 ソレト…』 『………』 『意ニ沿ワナイモノヲ始末シテヤレル』 『………』 香久良の中に息づく命を始末してやろうかと言うことか。 命の来し方行く末を、香久良の同意なくどうこうするのは間違っている。 香久良自身に話し、きっちり理解した上でなければ。 『綺麗事ダケデ物事ガ済ム訳ガナイダロウニ』 『………本人に説明してからだ』 『今ナラマダ間ニ合ウゾ』 感情を暴発させたらダメだ。 護矢比古はじっと待つ。 『何処に置かれるか…。 可能なら、香久良と姉を纏めて…』 「うわ!なんだ、これ!」 「手足が…!」 意識があると気づかれないようにしながら、護矢比古は薄目を開けて自分の足を見た。 『…………これほどとは…』 陽の光の元で見た足は、どす黒いものが巻き付いたような色をしている。 闇よりも黒い色。 呪いは巻き付き、うねり、心臓に向かおうとしていた。 「こんな…、禍々しいものが絡み付いてて、こいつ…」 「おっかねえ、早く言われたところに置くべよ」 「気持ちが悪ぃ、早く終わらせるべ」 得体の知れないものほど怖いものはない。 護矢比古に取り憑いた呪いが質の悪い物だという事だけはわかる。 なら、かかわり合いになる前に離れるのが得策。 言われた通りの場所に乱暴に降ろすと、男たちは足早に立ち去った。

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