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どごおっ! 「………!?」 何かが吹き飛ぶ音がして、夜刀比古は起き上がった。 蔀戸を開けて見れば、広場で土煙がもうもうと立っている。 「……………!?」 処刑台として設えた簡易牢が破られ、護矢比古の姿がない。 「なんて奴だ…!」 一緒に閉じ込めていた香久夜もいない。 香久良と勘違いして連れていったのか…? 辺りを見回せば、あちこちで煙が上がっている。 明らかに、里の外へと向かって。 煙の間から見た感じでは、何かを肩に担いでいるようだが。 「バカな奴だ! 其れはお前が大事にしている香久良じゃないのに」 目も良く見えていなかったようだから、偽物の香久良を担いで逃げようとしているのだろう。 夜刀比古にとっては渡りに船だ。 「時期様、どうしますか?」 「あいつは里に満ちてる呪いの大元だ。 担いでいる女も不吉な獣腹。 早く始末しなければ、土が穢れるぞ」 「はい」 槍や剣を手に、男達が駆けていく。 「ふふふ…。 醜いな、ほんとうに」 可笑しい。 可笑しくてしかたない。 母と自分が長く蔑ろにされる切っ掛けになった護矢比古の闇色に染まった四肢、逆立つ髪。 里の者達に慕われた面影はもうない。 ただ力任せに暴れるだけの、醜い化け物に成り果てた姿…。 「ああ、社にも厄介なのが一人いたな。 あいつもついでに始末してやれ」 一生懸命看病していた香久良を思えば心が痛むが、先々を考えれば障害にしかなりえない。 護矢比古の母親を引きずり出して来いと指示を出し、夜刀比古は上着を羽織って外へ出た。

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