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出立

……一週間後。 禁域全ての枝垂れ桜が満開となった。 巫女姿の咲良が、奥宮の更に奥にある泉の前にチョコンと座る。 両親と宮司に話をした際に身に付けていた勾玉の首飾りはない。 「贄姫、心の準備はよろしいか」 宮司に問われ、袿(うちぎ)を目深に被る。 両親には見えないように隠形した付喪神たちは、最後まで咲良を引き止めようと周りに陣取った。 「はい」 両親が見守る先で、等間隔に立った神職達が不思議な形をした鈴を鳴らし始めた。 しゃん。 しゃん。 しゃりん。 星が天から降り注いでくるような、清らかな音色。 それが、重なる。 しゃりん。 しゃりん。 しゃりん……。 重なり、連なり、音が輪になっていった。

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