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球体から花びらが剥がれる。 剥がれた花びらは風に再び巻かれて宙に舞い、少しずつ球体が形を無くしていく。 さあああ………………。 泉の上で舞い続ける花びらの渦の中に、月を背にした人影があらわれた。 無駄の無い均整の取れた体躯は、話に聞いていたよりも小さい。 天を突くような巨人ではなく、寧ろ普通の人間に近いと感じる。 「我(われ)を喚んだのはお前か?」 「………………っ」 嗄れてもいない耳障りの良い若い男性の声に、咲良は一瞬声を失った。 「もう一度聞く。 我を喚んだのはお前か」 「はっ、はい、……わが君」 「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………思ったより小さいのだな」 「………………っ、は、はい」 「…………そうか」 暫し首を傾げて思案するが、鬼も深く考えるよりは用事を早く済ませたいらしい。 程好く筋肉の乗った腕を差し出した。

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