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「……温かいのですね」 触れて、感じたままを言葉にする。 「お前の指は冷えている。 かなり緊張したのであろう?」 「い、え……」 答えている間に、鬼がその場に膝をつく。 「………………?」 「境界を越えるにはお前は少々小柄すぎる。 間違えて飛ばぬように、我に掴まっていろ」 「………………は、はい」 首の後ろに両腕を回す。 「もっと力を入れても構わない。 しっかり掴まっておらねば、吹き飛ばされてしまうぞ」 「あ、は、はいっ」 ギュウッとしがみつくと、まるで幼子をあやすように背中をトントンとされた。 それだけで、胸のなかにあった不安が一気に凪いでいく。 袿ごと包み込むように咲良を抱きしめ、鬼はゆるりと立ち上がる。 同時に、周囲を舞う花びらが逆方向へと流れて二人を包む球体へと形を変えていく。 「…………あっ」 鬼と同じ場所に来て、咲良は漸く気付いた。 うっすら輝いて周囲を取り巻く極細の鎖と、咲良にすら見えないように隠形して剣呑な表情を浮かべていた式神に。 「あれが見えたか」 「はい」 「あの宮司、なかなかの狸だな。 少しでも踏み出せば、我など一捻(ひとひね)りだろうよ」 「………………?」 「なんでもない。 父母に言葉をかけてやらぬで良いのか?」 「………………っ」 紗ごしに見える両親は、複雑な表情をしていた。 ……とても。

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