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夢うつつの中で複数の人間の大きい声を聞いていた咲良は、おずおずと守弥を見上げた。 「……………?」 毛先が少し跳ねた黒髪は迎えに来てくれた鬼に似ている。 だが、あったはずの角がない。 周囲を見回しても、角の生えた者はいない。 「対の鬼さまは……?」 キョロキョロすると、長い髪がぴょんこぴょんこと揺れる。 「ここは、何処でございますか……。 対の鬼さまは……、対の鬼さまは何処に……?」 「我……だが」 「…………っ、鬼さま……?」 再び見上げた相手には、やはり角がない。 思い返せば聞き覚えのある声なのだが。 「でも……、角がござりませぬ……」 垂れ気味のクリクリとした目を丸くし、小首を傾げる様は兎を連想させた。

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